おことわり

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2012年6月27日水曜日

別離

配給会社も強調する「観客賞」の多さが、作品の
普遍性を証明しています。ぜひシネコンで上映を!
週末にようやくこちらでも始まった「別離」へ。
いやぁ、これはいい。観終わった後に「良かった~っ」と伸びをしたくなったのは、新作では「ダークナイト」以来かも。全然傾向が違いますが。

よくもまぁ、この題材でここまで引っ張る物語が作れるものだと感心しました。登場人物の心理や行動は宗教的な面を除けば、ごく普通の市民のそれであり、突飛な行動もなければ、気の利いた台詞をはくわけでもない。彼らが直面するのはひたすら現実だけ。ひとつのトラブルにおける、誰にでもありがちな、心の弱さが生み出す言動が、各々の立場や居合わせた場所によって、家族の亀裂という誰も望まないレールに進んでしまう悲劇。そしてほのかに浮かび上がる社会の不条理。

この監督が巧いなぁと思うのは、物語の流れのリアリティの高さもさることながら、謎解き的な要素があるにもかかわらず、回想シーン等を一切見せず、物語を直線的に進行していくこと。このことで、観客自身も登場人物と同様に「事件が起きた時の記憶の曖昧さ」を共有し、話の展開に惹きこんで行く。そうした語り口を技巧と感じさせないところが、また見事。

それにしても。遠い昔、学生の頃に岩波ホールあたりで観た欧米以外の国の映画は、この作品で言えば家政婦側の視点で作られたものが多くて、日常と離れすぎていて敬遠していたのですが、いつの間にこんなに身近に迫る存在になっていたとは。時の流れとグローバリゼーション恐るべし、であります。

2012年6月24日日曜日

ミス・アメリカ パリを駆ける

野口久光のエントリーを書いていて思い出したのですが、以前ヤフオクに上村一夫が描いた「シェルブールの雨傘」のポスターが出品されていて感心したことがあります。1973年のリバイバルの時のものでちょうど「同棲時代」の全盛期な訳ですが、いろんな方がいろんな所で仕事をしているものです。
この「ミス・アメリカ パリを駆ける」も「いろんな方がその昔…」といいたくなる1枚です。

このチラシのイラストを描いているのは今では”アンパンマン”で押しも押されぬ巨匠のやなせたかし(コメントも書いています)。

やなせ氏のイラストと記されてはいませんが、同じ東和配給の「女はコワイです」(1963年11月公開、未所有)でも名前入りで似た仕事をされており、サインが一致しますので間違いのないところです。

タッチは今とはちょっと違った大人っぽい感じですね。
やなせ氏のこの頃の仕事で有名なのは「手のひらを太陽に」の作詞ですが、Wikipediaの記述によれば、この曲は1961年に作られたものの、ヒットしたのは1965年とのことで、まだまだこの時代は雌伏期とでも言うべき頃で、いろんな仕事を手がけていたようです。

古い作品を集めていると、大伴昌司といい、思わぬ出会い、発見をすることがあり、自分にとってはこれも蒐集の楽しみのひとつです。

なお、今回のエントリーも含めて、大伴昌司のラベルを「あの人はその昔」に変更します。また何か発見したらここで報告したいと思いますし、「こんなネタ持ってます。」という方はぜひ情報をお願いします。

2012年6月23日土曜日

野口久光 シネマ・グラフィックス 黄金期のヨーロッパ映画ポスター展

先週末は足を伸ばして埼玉のうらわ美術館へ。24日で終了する”野口久光 シネマ・グラフィックス/黄金期のヨーロッパ映画ポスター展”に行ってきました。昨年西宮で開催された展覧会を全国で巡回しようとしているもので、年内にもう1ヶ所予定されているそうです。

内容は前年の展覧会を基に出版された同名の書籍の実物がポスター主体に展示されていました。ほかにもスケッチや雑誌の表紙、レコードジャケット等も。やっぱり立看ポスターはいいなぁ。

自分は残念ながら野口氏の全盛期以降に生まれ、むしろその後の毒々しい商業主義的な宣伝に興味を惹かれるような人間なのですが、それでもこうやってあらためてまとめて拝見しますと、独特のふくよかな人物描写や色使いが魅力的ですし、こういったポスターが街中に溶け込んでいた昭和の光景に憧憬を感じてしまいます。

ジャズ評論家としても高名な野口氏、
「KCジャズの侍たち」(1982公開)の
デザインも手がけています。
チラシ愛好者としては、野口氏の東和での仕事が当時のチラシに活かされなかったのはちょっと残念。とはいえ、これは印刷技術の問題等もあったのでしょうが、ポスターの図柄がチラシに反映されるのは60年代後半あたりからのようで、業界全体の現象なのでやむを得ないのかもしれません。ポスターはポスター、チラシはチラシで独自性があったほうが楽しいですし。現在の”本社指示直訳”みたいなポスターをそのまま縮小した奴はホント味気ないです。

「大人は判ってくれない」を監督のトリュフォーが気に入って事務所に原画を飾ったというエピソードもあるとおり、世界的な評価も高い野口久光ですが、こういった展覧会を美術館で開くのにはまだ壁は厚いようです。企画協力者のNPO法人古き良き文化を継承する会根本氏のインタビューを読むと、最初の展示会まで5年かかったそうで、この種の表現の美術的評価の「敷居の高さ」が覗われます。個人的には芸術性の高いものより、どちらかといえば俗っぽいものに関心が高いので、野口氏に限らず、もっとこの種の世界で活躍している方を美術館もとりあげて欲しいと思うのですけれど。

かくいう自分自身も、知ったのも訪問もずい分後になってしまい、紹介が終了日前日になってしまったので、反省しています。

2012年6月18日月曜日

サウンド・オブ・ミュージック

初公開時のチラシ(B5三つ折)
1965.6.21に丸の内ピカデリーにて封切、11.13に東劇・新宿ピカデリー・渋谷東急で拡大公開、
12.25に丸の内松竹に引き継がれ、翌年2.18に終了。堂々36週の大ロングラン興行でした。
いつもお世話になっているkussy's Movielandさんの投稿掲示板がめでたく5周年となりましたので、遅ればせながらお祝い企画として、管理人のkussyさんが大好きな「サウンド・オブ・ミュージック」の特集を。といっても、この名作は(当然のことながら)数限りなく上映されていますので、70、80年代に20世紀FOXが東京23区内の映画館でリバイバル上映した時のもの、のみに絞った小特集です。こちらにまとめてみました。
手持ちのものの分かった範囲でなので、抜けがある可能性が高いです。「まだあるよ」との情報をお持ちの方はぜひともご連絡を願う次第です(これらのリバイバル版には少々謎の品が流通しており、この辺は後日また触れます)。

65.12.25京浜地区拡大公開時。ジャケットサイズ三つ折。
こうやってあらためてリバイバルのチラシを眺めてみますと、デザイン的には大きな変更はないものの、裏面の文章が時代に合わせてリライトされていて、FOXがいかにこの映画を大事にしていたかが窺われます。「クレオパトラ」で傾いた会社を(「史上最大の作戦」とともに)救った作品ですからね。

恥ずかしながら映画館で観たのは昨年の「午前十時」が初めてだったのですが、小学校の時に「日曜洋画劇場」で観た時の感動が素直に甦り、映画はもちろんのこと、そのことにも感動しました。

いろいろな意味で息苦しい時代になっていますが、そういう時こそこのような名作で心を洗って、明日に向って生きていきたいものです。

また、ここに来てくださる方の大半はkussyさんのサイトによって知った方だと思いますが、もし一度も行ったことがない、という方であれば、今すぐでもお訪ねいただき、もはやlandというよりworldといったほうが良いような広大なチラシの世界を楽しんでいただければと思います。

kussyさん、これからもよろしくお願いします!

H24.9.30追記 1978年4月にも有楽町スバル座で上映されていました。上記に書いた「謎の品」の件もあわせ、下記エントリーも参照いただければ幸いです。

「サウンド・オブ・ミュージック(の怪談)」
「サウンド・オブ・ミュージック(その2)」

2012年6月13日水曜日

ダーク・シャドウ/わが母の記

最近は週末1本ペース。

映画の日に「ダーク・シャドウ」を。うわぁ、ティム・バートンも11年ぶりだ。「猿の惑星」以来か。あれは絶句したなぁ。古澤利夫の本で「FOXがラストを17分切った」と暴露してましたが、それ以前の問題のような気が。

それにしても何で設定が1972年なのか?観終わった後、パンフを読んで元のTVシリーズが1971年まで続いていたことを知り、それでかな、とも思いましたが、あまり積極的な意味が感じられませんでした。

登場人物が必要以上に多い気がしましたが、これも原作のせいなんですかね。話の最初と最後の大事な役回りを務めるベラ・ヒースコートが本筋でほとんど出番がないので、ラストも取ってつけたような感じになってしまって盛り上がりに欠けます。愛を貫く話より横恋慕の痴話喧嘩に監督の興味が行ったんでしょうか。エヴァ・グリーンは熱演で、それはそれでよかったんですけれど。

チラシの図柄を見ると、ベラ嬢はだいぶ奥の方に追いやられていて、ちょっと可哀想な気もします。
わが母の記」は客層の関係もあってかなかなかレイトショーにかからなかったのですが、今回ようやく観ることができました。

原田監督も故郷を題材にした話で勝負に出て、海外で賞を獲るわ、観客動員も上々だわと、その辺は素直に喜びたい。自分も沼津に住んだ時期があるのでなおさらです。

ただ、感想は、と言われると、結構台詞が聞き取りにくくて。主人公の親世代の人間関係の絡みがいまひとつ理解できず(ほとんどが会話で説明される)、話の流れに乗り損ねてしまったのが残念なところ。また、この映画は家族の年代記の側面があるのですが、周囲の人間の加齢は感じても、樹木希林の「老い」の変化はあるようなないようなで、自分には違和感。

まぁ、これ以上書くと、映画評論家でもある原田先生から「オマエは映画のことが何も分かってない。今から職員室に来い」と一晩中説教されそうなので、この辺にしておきますが。

しかし、何をさておいても、この映画でいちばん嬉しかったのは、誕生日パーティのシーンでラテン・バンドが「ラ・ゴロンドリーナ」を唄うところですね。「ワイルドバンチ」で印象的に使われているあの曲です。さすがペキンパー本の翻訳もしている監督ならでは。

「スターシップ・トゥルーパーズ」といい、この曲を使う映画は皆いい映画だ!と勝手に認定していますので、とりあえずご機嫌で映画館を後にした次第。我ながら単純です。

2012年6月9日土曜日

三国志外伝(横浜ホール上映版)

前世魔人シリーズの最終第三夜は「ミッドナイト・エクスプレス」の別柄、に見えて実は特集上映、というのを紹介するつもりだったのですが、残念ながら実物が手元にありませんでした。私事ではありますが、転勤族の身ゆえ、すべてのチラシを持ち歩いている訳ではなく、80~90年代の大半は実家に眠っていたりします。いずれ機会があればご紹介、ということで。

気を取り直して、といいますか、それとは別件でKUSSYさんのところにかつて投稿していたもので、大失敗をやらかしたことに気づきましたので、恥を忍んでご紹介。これもちょっと魔人系なんですが。

チラシ大全集で時々あるのが、作品の公開時期と掲載した画像のチラシが上映された時期が異なるケース。特に80年代以降では、「映画祭で初上映された時期」と「単独で公開された時期」がずれていることが、少なからずあるようです。

この「三国志外伝」も1984年11月の「第六回中国映画祭」で上映されていて、その後時期は分かりませんでしたが、にっかつから「三国志外伝/曹操と華佗」というタイトルでビデオ発売されたようです。

このチラシはさらに時代が下って1992年に横浜で自主上映された時のもの。日付と広告の著作権マークの年号からいって間違いないところです。

そして、このチラシは大全集では1984年に掲載されています。大全集をよーく見ますと、裏面の日付や会場も映っており(割と薄手のチラシです)、同じものだと思われます。

自分は日付も確認せず、all cinema onlineの84年11月上映という情報だけを頼りに「3月だから翌年だよな」と安易に考えてしまったのでしょう、1985年公開時のもの、と馬鹿な投稿をしてしまいました。嗚呼恥ずかしい.…

まぁ、これからも失敗は度々あるでしょうが、ここはやはり「過ちては改むるに憚ること勿かれ」ということでやってまいりますので、今後ともよろしくお願いします。

それにしてもなぁ、(C)マーク見落とすなんて。とほほ…

2012年6月7日木曜日

或る夜の出来事(77R)

A4三つ折り

前世魔人シリーズの第二夜。

この時の邦題は「ある夜の出来事」。例によって水野晴郎によるタイトルのプチ整形です。

この「チラシ」の画像をはじめて見たのは、自費出版のチラシ本だったかも。いったんはショップで実物を見てパスしたんだけれど、ヤフオクで格安だったんで結局入手してしまいました。

正体はこちら。ということで、ソニーの白黒テレビのカタログです。

なんというか、チラシの正体云々よりもカタログの中身が懐かしくて。JACKAL、あったよなぁ。小学校高学年の頃、ラジカセ&BCLブームで、電器屋さんへ行ってラジカセのカタログを集めたりしたものです。最初に買ったビデオはベータ。社会人になってローンを組んで買ったミニコンポはリバティ…とソニー製品にも憧れました。ソニーも昔の面影がなくなってしまったようで残念なのですが、先日のエントリーで触れたパイオニアさん同様、何とか頑張って欲しいものです。

2012年6月6日水曜日

夏の夜は三たび微笑む

前回のエントリーを書いている時、どうも昔のTVドラマ「ダイヤモンド・アイ」の主題歌のフレーズ「前世魔人の正体見たり♪」が頭から離れなくて困った。俺、この番組見た記憶がないんだけどなぁ…

ということで、欲にかられて入手してみたものの、案に相違していた”前世魔人”な品々の正体を、己の不明を恥じつつもサクサクと紹介してみたい。

まずは「夏の夜は三たび微笑む」。正体はこちら。まぁ、ネット・オークションでもよく見かける、演劇のチラシに映画の広告がついているパターンですね。

一応弁解?しておくと、これ「チラシ大全集」のP.55に載っています。で、オークションで表の画像だけ見て札を入れてしまった、と。

よくよく考えれば、東宝のマークもついてるとことか、怪しい部分も確認しなきゃいけないわな。熱くなると見えなくなりますね。反省。

※H24.6.7追記 あちゃ~、よく見ればちゃんと「東和映画・東宝、共同配給」と書いてあるではないか。ちっとも怪しくなんかないじゃん。したり顔で書き飛ばして、何やってんだか。ごめんなさい。
でもそれだったら、マークは並べてよ…

2012年6月3日日曜日

キョンシーズ(新・キョンシーズ)

最近、エントリーが長文化してるなぁ。今回はサクっと。

コレクションの動機は人それぞれだと思いますが、自分の場合、チラシ本やネット、ショップの店頭で「あ、これ持ってない」と思うとすぐ手が出るくせがあって、手に入れた後で「このチラシは何なんだ」と疑問に思うことが多いです。特に80年代後半以降の「珍品」といわれるものとか。

そのひとつが、この「キョンシーズ」。「大全集」とかには載っていないんですが、コレクターサイトかお宝紹介のムックとかに出ていたんでしょうね。手に入れて裏を見ると、劇場欄がぽっかり空欄。ホール上映用なんでしょうか。でも、しっかり「配給 大映」と表示が。う~ん、分からん。

さらに分からないのが、このタイトル。「キョンシーズ」という題名で劇場公開された作品のデータは見つからないのですが、1986年にテレビ放映された「幽幻道士」(原題「疆屍小子」)のビデオ題が「キョンシーズ」で、しかも発売元は大映。もちろんこのチラシの作品とは別物です。いったい何がどうなっているのやら。
チラシの裏面。かなりスペースが
空いていますが、埋まっている物
をお持ちの方はぜひご一報を。

今回、スタッフやキャストを手がかりにいろいろ検索してみたところ、どうも「新・キョンシーズ」というタイトルでビデオ発売された1988年製作の映画のようです。

功夫電影専科”という功夫映画作品を紹介するサイトにしっかりレビューされていました。世の中、凄い方がいらっしゃいます。

ちなみにこの作品、日本と香港の合作ですが、日本側の製作者である染野行雄氏はご健在で、最近では「イップ・マン-葉問」や「三国志英傑伝 関羽」といったドニー・イェン主演作等を提供しています。

それにしても、この時期の大映ってレアチラシがやたら多いんだけれど、この作品はどういう事情があったんですかね。何かご存知の方がいらっしゃったら、ぜひご連絡を。

2012年6月2日土曜日

バトルシップ/ミッドナイト・イン・パリ

5月に観た映画の続き。

バトルシップ」、妙に奥歯に物の挟まったようなホめ方がされているのはクレジットに出ている世界一の広告代理店がいっちょ噛みしているからなんですかね。それともあまりにも洋画の興行実態が悪くて、少しでも褒めておかないとまずい状況なのか。

ボードゲームの映画化だそうで、ストーリーや位置関係は分かりやすいし、伏線の回収も一応キチンとしている。最後にアレを動かすのも、映画なんだから全然OK。

主役の二人もまぁ頑張っているけれど、脇役が弱すぎ。何だあのマット・デイモンのフリしたゲイリー・ビジーやミシェル・ロドリゲスになり損ねたウィノナ・ライダーは。ガキっぽさ全開で、軍事演習が少年兵のピクニックにしか見えないぞ。リーアム・ニーソンも「制服を着て、立ったまま話す簡単なお仕事です。」という感じで、あれでチキン・ブリトーの厚さ位の1万ドルの札束もらうんだろうな。「96時間」の96分の1くらい仕事しろ。

浅野忠信も役回りの大きさに満足しちゃったのかな、それなりに活躍するけれど、キャラが立っていないのでほとんど印象に残らない。上述の脇役の人たちもそうなんだけれど、戦わなきゃ、宇宙人だけでなく監督たちと。「ケンカの言い訳に映画を使うなら、アジアではジェリー・ルイスではなく、絶対ジャッキー・チェンです。」とか言って「酔拳」の構えを見せるとかさぁ、ちったぁ頑張れ。渡辺謙とか、もっと監督とやりあっていると思うんだけど。

まぁ、でもこの映画の最大の弱点は敵役・悪役が弱いこと。まず、身内に足を引っ張るキャラがいない。「ダイ・ハード」のTVリポーターとか、「2012」のロシア系金持一家とかみたいな。こういう、イラっと来るキャラクターを置かないと、サスペンスは盛り上がらないし、最後に罰が当たって「ザマーミロ」的なカタルシスも出ないですよね。

宇宙人もぶっこわす割には人を殺さないよな。見守ってばっかりで。せめてPG12星雲あたりから攻めて欲しかったですね。そうすればもう少しブルックリン・デッカーの肢体を拝めたかもしれないのに。

結局、5月に観た映画でいちばん満足したのは最後の「ミッドナイト・イン・パリ」。

アレン作品、前回観たのは「ギター弾きの恋」なので…、えっ、10年以上も経っちゃったの。結構好きなつもりだったのに、なんてこったい。最近はミニシアター系でチャチャっと消えてしまうんで、しまったなぁとは思ってたんだけれど、そんなに観てないか。ショックだな。

とはいえ、内容はいつもながらのアレン節。出演者やロケーションが変わっても、いい意味で変わりませんね。リアルタイムで小津作品を観ていた人たちもこんな気持だったのかな。

それにしても、ポランスキーといいアレンといい、あんまりベテラン監督ばかりで満足するのもまずいよな。

俳優陣ではヘミングウェイ役の人がなかなかの好演だったのでIMDbを見たら、見事な化けっぷり。さすがです。

パンフレットで気になったのが、オーウェン・ウィルソンのフィルモグラフィーにジャッキー・チェンとのコラボ作品群が無かったこと。「アルマゲドン」や「エネミーライン」あたりなら分かるけれど、この辺も黒歴史扱いだとしたら、ちょっと寂しいですね。

灼熱の魂/キラー・エリート

遅ればせながら、5月に観た映画を。

灼熱の魂」、それなりに評判が高く、ミステリー仕立てというので行ってみましたが、いやぁ、キツかったっスよ、先輩(って誰に言ってるんだ)。

この種の「血のからんだ悲劇」って、例えば「チャイナタウン」みたいな設定・背景だったら、フィクションとしてそれなりに楽しめるんですけれど、ぼかしているとはいえ、現実的な民族紛争、宗教対立のドロドロした中でこれを出されると、個人的には「あざといなぁ」という気持が先に立ってしまいます。

パンフを読むと、欧米では「ギリシャ悲劇と比肩する~」みたいな褒め方をしているようで、向こうの人はこういった話をひとつの創作物として鑑賞・堪能できるんでしょう。

「やっぱ、食い物が違うんだな~」と感じます。

客は自分を含めて二人。極東の疲弊した地方都市ではこんなものかな。

キラー・エリート」、リメイクではないと知りつつも、タイトル(響きがカッコいい)とキャスティングに惹かれて行ってみた。

実話の映画化、なんだそうですが、この手の諜報活動は裏を取るのも限界があるでしょうから、言った者勝ちだよな。どうせ文句なんて言えないのなら、もう少し話を面白くしても良さそうなものだけど。それはイカンのか。

というか、題材はいいんだろうけど、演出がいまひとつの感。アクションシーンも、もう少し見せ方に工夫が欲しいし、ステイサムと恋人のからみも話のアクセントとして効果が薄い。CM畑の人のデビュー作らしいですが、変に凝ったことをしていないのはいいけれど、どうも盛り上がらないんですね。編集が悪いのかな。

メインの3人はそれなりに頑張っているし、脇役もいい味、スリーショットの丁々発止もちゃんとあるんで、その辺は良かったんですけどね。