おことわり

本ブログの画像の転用は固くお断りします。
photos on this site are NOT allowed to be used on other websites.

2012年8月26日日曜日

あるマラソンランナーの記録


夏休み中、実家で久々に日経新聞を読んでいたら、シネコンについての特集記事が載っていて、シネコンの飽和状態はやはり深刻な状況のよう。観客が減っているのに箱ばっかり作っててもなぁ。MOVIXのチラシ棚はすっかりアニメに占領されているし、ワーナーマイカルもレンタル事業を始めるようだし、「シネマ」度合は薄くなっていくばかり。まぁ、映画自体が動画コンテンツビジネスの一形態(あるいは一プロセス)になったと言えばそれまでなんでしょうが。

それはさておき、日経の最終面の「私の履歴書」をメキシコ五輪のマラソン銀メダリスト、君原健二氏が執筆されていて、「あるマラソンランナーの記録」に触れていました。

この作品は黒木和雄が監督した記録映画で、本作の製作時のトラブルから劇映画に移ったともいわれています。
トラブルといっても監督と製作会社の作品の方向性についての違いで生じたもので、君原本人には直接関係なかったようですが、「履歴書」を読むと、故障中の撮影だったこと、突然の製作決定で陸上部の監督がいい顔をしなかったこと等、あまりいい思い出ではなかったようです。

作品の評価は高いものの、もともとが企業PR用の記録映画であり、商業ベースで劇場公開されたわけではないので、チラシといってもどのような配布がされたのかは分かりませんが、当時はまだ無名(東京五輪前)の君原選手はまだしも、製作スタッフが記載されていないところにトラブルの根深さが垣間見えます。

せっかくの機会なので、当時の企業PR映画のチラシをこちらにアップしておきます。ある機関助士」は後年水俣病の記録映画で名をなす土本典昭のデビュー作、「小さな冒険旅行」は記録映画ではありませんが、原案:石原慎太郎、監督:大島渚という、今では想像つかない組合せの短編映画です。

ちなみにこれらのチラシはヤフオクで入手したのですが、この種のチラシは劇場公開作とは流出ルートが異なり、シネショップではあまり扱われないので、ネット時代ならではの入手という気もします。

2012年8月19日日曜日

ミッドナイト・エクスプレス(特集上映版)

すっかりご無沙汰してしまいました。
お陰様で盆と暮れだけはきっちり休めるので、ネット環境の無い田舎で伸びきっておりました。

休み中、3月同様トップページを「動的ビュー」というのにしたところ、1週間で1ヶ月分以上のページビューがあってびっくり。まぁ、いつも以上に海外からの怪しげなものが多いからなのでしょうが、ありがたいことです。今後ともよろしくお願いします。

ちなみに「ロボジー」がページビュー数を独走しているのですが、どうも画像検索で上位に来てしまっているのが原因のようです。映画の感想エントリーは単なる備忘録であり、「画像お裾分け」とかの意図はないので、事態の推移によっては画像を外すかもしれません。

休みで伸びきってしまってエントリーを書く気力がまだ湧かないのですが、帰省土産ということで、以前のエントリーで取り上げる予定でした「ミッドナイト・エクスプレス」の特集上映版を持ち帰ったのでアップします。

裏面はこちら。ということで、自由が丘武蔵野館のレイトショー特集でした。90年代初頭の時期、この劇場はあれこれ特集上映を組んでいますが、何でこれだけこんなデザインになったんですかね。担当者が好きだったのかな。作品は事実と違う、といった批判もありましたが、今ではトルコは普通に観光旅行先になっているもんなぁ。2020年五輪のライバルだし、時代は動いているな、とつくづく感じます。

2012年8月11日土曜日

ダークナイト ライジング/おおかみこどもの雨と雪

暑さから逃げ込むように「ダークナイト ライジング」の先行レイトへ。
「ダークナイト」が面白かったので、「ビギンズ」も見ておかなきゃ…と思いつつ、ダラダラ過ごしているうちに、とうとうこの日を迎えてしまった。

完結編、ということで前2作とつなげているものの、自分のような怠け者でもついていける親切な作りになっていますが、徹底的に”ジョーカー”を切らないのは、ノーラン監督の意地か。ここまでの長編になってしまったのはひとえにノーラン監督の作家性を尊重したからでしょう。スタジオ主導で他の監督にしていたら、1時間近くカットされるか「ハリポタ」みたいに二部作興行になっているのでは。それだけ「ダークナイト」の存在が監督にもスタジオにも大きいということですかね。

予告編を観て、ちょっと危惧したCG過剰演出(競技場のシーンとか)も、本編では手際よくまとめていて、重厚なムードにかかわらず、退屈させることなくまとめ上げる力量は大したものです。

とはいえ、「ダークナイト」で見せた「札束放火」や「二者択一」の悪魔的なイマジネーションは最後まで窺えない(あえて避けたのかもしれないけれど)ので、「また観たい!」とまではいかなかったかな。せっかく「ライジング」したのに「最後はそこに落ち着くかっ」みたいな部分もあるし。でも、ここまできっちり片をつけたのだから、文句は言えないですね。ってエラそーに書いて、1作目をいつ観るんだ俺は。

おおかみこどもの雨と雪」も予告編で、ちょっと嫌な予感がしたのものの、富山が舞台なので行ってみたのですが、「予感」が当たってしまった感じです。

今まで観た細田作品は、「時をかける少女」はタイムトラベルの、「サマーウォーズ」はSNS世界と現実との関係の、といった「映画内ルール」みたいなものがあって、この2作は幸いそのルールに「乗れて」楽しめたのですが、今回の「おおかみおとこ」ルールはダメでした。

「狼男」ではなく「おおかみおとこ」にしている時点で気づけよ、ってところかもしれませんが、人か狼か、という選択にあたっての”狼”を示す描写に肉食や血といったリアルな獣性がないのは激しく不満です。自然に戻るんではなく、野生に帰るんだと思うんですが、方向性としては。背景画が妙にリアルなので、よけい違和感を感じます。ラブシーンやこどもの「猫耳」はあまり気にならなかったのですが…

作り手としては「おおかみ設定」云々はそこそこに「子育て・自立」を描きたかったのかもしれないし、テレビ局主導の夏休み映画なので、脱臭・浄化されてしまうのかもしれないけれど、説得力が弱いんじゃないかなぁ。「お前みたいな客は相手にしていない」といわれりゃそれまでなんですが。ところどころいいシーンもあったにせよ、村民等の人物描写が物語の進行用のその場しのぎ感が強く、宮崎あおいの吹替えも長い台詞はこなせていない感じがしたので、全体的に「時間切れ」だったのかもしれません。

2012年8月6日月曜日

女王戴冠/民族の祭典(総集編)

気がつけばオリンピックも後半戦。ロンドン五輪ということで、ちょっと便乗して英国と五輪ネタを。

今年はエリザベス女王即位60周年。来日した時、自分は小学生でしたから、歴史を感じます。
で、即位の翌年1953年6月2日の戴冠式の様子を収めたのがこの「女王戴冠」。
チラシには「6月中旬公開」とあり、調べてみると6月15日に公開されたようです。

式から2週間で公開という突貫工事。自分は「記録映画」というと、長期取材したものというイメージがあるのですが、この年の2月にNHKがテレビ放送を始めた状況ですから、速報性で商売になった時代なんでしょうね。ちなみに日本初のテレビ中継は皇太子殿下がこの戴冠式に向けて横浜港を出発するところだったそうです。

ブログを書くようになってから新聞の縮刷版で古い映画広告を眺める機会が増えたのですが、三島事件(1970年)の時も「事件のニュース映画上映中」という広告が出ていて感心しました。映画の観客数が落ちていく過程というのは、「女王戴冠」の速報性や「三島事件」の衝撃性といった商品価値を他のメディア(テレビやネット)に代替されていくことなんだな、と。

そう考えれば、オリンピックの記録映画が上映されなくなったのもごく自然な流れで、当初74年にリバイバル上映を予定していた「民族の祭典」がお蔵入りしたのも仕方ないのかもしれません(先日古書市で映画雑誌を立ち読みしていたら、有楽座で公開予定の広告が出ていました)。

当時のチラシ(東和でよくある単色二つ折りのもの)には「戦前・戦後を通じて、映画による観客動員数の最高記録をうちたてた。」とあり、東和としては誇るべき大事な作品であったのでしょうけれど、時代の流れには逆らえなかったんでしょうね。

そういえばこの映画、まだ洋画作品のビデオ化がほとんどされていなかった頃、他の東和作品(「真夏の夜のジャズ」「シェルブールの雨傘」)と一緒にCBSソニーからビデオ発売されたように思います。そんなところでも先進的な作品ではありました。

2012年8月5日日曜日

リンカーン弁護士/SHAME-シェイム-

7月に観た映画の続き。
まずは「リンカーン弁護士」。「リンカーン/秘密の書」のチラシが11月公開になっていたので、こっちも何となくまだ先の公開だと思っていたら、すでに公開中で早期終了のフラグが立っていて、あわてて映画館へ。

崖っぷちの男」のエントリーで脚本にひねりが無い、とか書いたけれど、では大阪市長よろしく「じゃ、対案を出せ」といわれると、こっちも浮かばない訳で、ついついお役所の常套句「それは私の仕事ではありません。」とか言ってゴマかしたくなってしまうところではありますが…

そんな時にこの映画を観ると、「いやいや、ちゃんとした映画はやっぱキッチリ作ってますぜ。」と、ホッとした気持ちになります。「崖っぷち」がオリジナル脚本なのに比べ、こちらはアメリカでは賞も取ったベストセラーが原作ですから、元のよさが違うんでしょうし、「拾い物」という表現も失礼な”格”なのでしょうけれど。

ミステリー系なので詳細は書きませんが、話の展開も面白かったし、出てくる役者も皆さん芸達者で魅力的。暴走族の連中の使い方あたりは「こういうのが映画だよなぁ」と思ってしまいます。それにしても「バトルシップ」といい、ハリウッド映画もいつのまにかサッカーを使うようになってますね。

一方の「SHAME-シェイム-」は、映画が、というより、監督の名前に興味があったので、行ってみたのですが。

自罰的なセックス依存症の兄の心象風景を、やはり自罰的な恋愛依存症の妹をからめて描いた一編、ということなんでしょうが、正直なところ、自分の興味範囲外の映画でした。

特段つまらない、ってこともないし、映像もきれいにまとまっていましたし、ファスベンダーのお相手の女性たちは羨ましいくらい美人揃いなんですが。ただ、この種の映画にエロスを求めようとは思わないけれど、主人公の苦悶を18禁シーンで描かれてもなぁ、というところでして。この辺は監督さんがゲイだというのも関係あるのかな。

ドライヴ」でだめんずの妻を演じていて、ちょっと魅力的だったキャリー・マリガンが「体当たり演技」をしているのですが、こっちは外したかなぁ。とりあえず「ニューヨーク、ニューヨーク」を歌っているのをアップで延々と映されたのには、ルドヴィコ療法を受けてるんじゃないかと思ったくらいつらかったです。

2012年8月4日土曜日

シネショップのチラシアルバム

左がクリエイト鷹(シネマ・ファースト社)、右がFOXスクリーンフレンドのチラシアルバム

以前紹介しましたシネマ・ファースト友の会のエントリー中で「チラシアルバムに再会したい」と書きましたところ、このブログをご覧いただいたStevenさんより、シネマ・ファースト社とFOXスクリーンフレンドのチラシアルバムや封筒の画像を送っていただきましたので、小生の責任にてご紹介させていただきます。

いやぁ、嬉しいです!本当にありがとうございます。ブログを始めて良かった…

シネマ・ファースト関連はこちらFOXスクリーンフレンド関連はこちらにまとめております。

Stevenさんも、70年代半ばにチラシを熱心に集めておられ、「FOXスクリーンフレンド」や「鷹」の通販を利用されていたそうです。
「スクリーン」76年6月号の広告画像もあわせて提供いただきました(画像のアップは遠慮させていただきます)が、シネマ・ファースト社はやはり「鷹」さんと同じ経営系列でした。小生がチラシつき写真セットに夢中になった80年代初頭には一本化されていたのかもしれません。

また、この頃のFOXスクリーンフレンドの広告はスターのキャビネセットが中心で、チラシはまだ隅の方でした。この手の映画雑誌を読むようになった70年代後半にはチラシが主の広告になっていましたので、「夜明け前」な印象です。以前紹介したシネマ・ファースト友の会が有料化したのも76年12月号の広告からのようですので、この時期からブームが通信販売によってさらに勢いを増したのではないでしょうか。


当時のFOXスクリーンフレンドの広告を引用しますと…
************************************************
大流行の宣伝用チラシ       
売り切れ近し/5枚セット¥400         
(250種あり)10作品記入下さい。その中  
より5作品希望通り折らないで送ります。 
○切手で良い ○新カタログ№10号    
ローマの休日/大空港など 250種リスト 
切手¥100ですぐ送ります。        
************************************************
とありまして、当時はまとめ売りのみの対応だったようです。

(C)講談社・少年マガジン
Stevenさんからは他にも当時の「少年マガジン」のチラシ記事の一部も提供いただきました。記事のアップはこちらも遠慮いたしますが、これだけはちょっと紹介を。

「映画チラシ大全集PART2」(1977年発売)の宣伝記事なのですが、表紙が実際に発売されたものと違っていました。これは貴重ですね。

チラシブームの状況をうかがい知るこの種の情報はネットでもほとんど出てこないので、個人的には非常に残念なのですが、Stevenさんのように、こうやって当時のものをしっかり保存している方がいらっしゃると、とても嬉しく、心強く思います。何かの縁でこのブログにたどり着いた方で、「こんなの持っています」という方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡をお寄せいただければ幸いです。

あらためまして、Stevenさん、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします!