おことわり

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2013年9月14日土曜日

屋根の上のバイオリン弾き/チキ・チキ・バン・バン(76R)

70年代のリバイバル上映に同一デザインの使い回しが多いことは、「卒業」「荒野の七人」のエントリーで書きましたが、見分けるポイントの一つが配給会社のロゴマーク。

ユナイト映画も60年代後半からロゴがいろいろ変わっています。自分は70年代後半から映画を観始めたので、どうもユナイト映画はこのマークがついていないとユナイトっぽさを感じないのですが、この”T”をかたどったマークは当時の親会社、トランスアメリカ社のものでユナイトそのものとは無関係。

当時のチラシを確認しますと、このTマークが右から左に移ったのは1973年7月公開の「007死ぬのは奴らだ」あたりからのようです。

とはいえ、リバイバル作品の場合、この修正が必ずしも徹底されていなかったよう。「屋根の上のバイオリン弾き」(初公開は1971年12月)は76年上映時(縦型のデザイン)は左にありますが、80年の上映時は初公開のものをそのまま流用したせいか、マークが右のままです。この時の上映状況を考えると、急遽決まった感じも受けるので、封切時の版下をそのまま使ってしまったのかもしれません。「屋根の上…」については再版ものもありますので、こちらにまとめてみました。

分らないのが「チキ・チキ・バン・バン」のリバイバルで、テアトル東京で公開された時(1976年3月)はとっくにTマークが左にあるべきなのになぜか右に。他の地区の公開(70㎜マーク)は左になっています。なぜこの時期にこのロゴが使われたのでしょうか。前からリバイバルを準備してチラシだけ作っていたとか?

謎といえば謎ですが、どうでもいい話ですよね。

この際なので、さらに細かい話をしますと、トランスアメリカ社についての表示は76年4月頃より、”Entertainment from Transamerica Corporation”から”A Transamerica Company”に変更されています。調べてみると、コーポレーションとカンパニーの違いはあるようなのですが、英語にはとんと疎い自分にはよく分りませんでした。
「チキ・チキ・バン・バン」(1976リバイバル)
チラシ右下部のユナイト社ロゴ。
上がシネラマ版、下が70㎜上映版です。
日本も最近は合併が増えて、足し算みたいな社名の会社が目立つようになりましたが、企業買収が恒常化しているあちらではよくある変更なのでしょうね。

トランスアメリカ社については例の「天国の門」(1981年公開)の問題が起きてから、ユナイトからは手を引いており、「屋根の上…」の1982年上映時のチラシには同社の表示は消えています。

2013年8月31日土曜日

殴り込み海兵隊/壮烈第一海兵隊・向う見ず海兵隊

写真の流用について、一本発見しましたので、kussyさんところへ投稿したのを機にこちらで。

殴り込み海兵隊」は1959年製作・公開作品ですが、翌年日本で公開された「向う見ず海兵隊」の中面に「殴り込み…」の表紙の写真が使われています。

「向う見ず…」は1952年製作なので、「殴り込み…」の方が流用している可能性もありますけれどね。「殴り込み…」の兵士の右手に持っているのはカメラのようなので、「向う見ず…」の主人公が報道班員ということで写真を使ったのかもしれません。

配給は両方とも日本アライド・アーチスツ。アライドというと、「昼下りの情事」(日本での配給は松竹=セレクト)の制作会社という印象しかないですが、この種の小品をいろいろ作っていたようです。

話は逸れますが、流用で最近どうもひっかかったのが「少年H」の特報の音楽。「午前十時」をずっと観ていた身にとっては、もともと予告等に使われる曲らしいですが、引いてしまいます。

まぁ某リメイク作品での「アカデミー賞受賞作品」と、ドーンと出る予告も相当なものでしたけれどね。

2013年8月25日日曜日

明日に向って撃て!

















ようやく少し涼しくなりましたが、気を取り直して再開いたします。

それにしてもエントリーのペースが遅くてすいません。
昨春「ディア・ハンター」のエントリーのコメントでくろばくさんから古澤利夫の回顧録「明日に向って撃て! ハリウッドが認めた!ぼくは日本一の洋画宣伝マン」を教えていただき、その感想がてら「明日に向って撃て!」をエントリーしようと思いつつ、時間ばかり過ぎてしまいました。今年の初めにチョコさんのブログにも「そのうち」とか書いたのに、何やってんだか。

中面。銀座松坂屋も今年6月末に閉店してしまいました。
で、先にチョコさんの疑問に触れておきますと、上の変形版のチラシは右下に「鑑賞券引換クーポン」とあり、中面には松坂屋のバーゲンご来場の方にクーポンプラス400円で前売券と引き換える旨書かれています。前売券も400円ですが、日比谷映画の前売発売は公開1週間前からだったようなので、先行販売の意味合いが強いかもしれません。

当時の新聞広告には「FOXスクリーンフレンドの会員は前売券はこちらで」と、引換券の交換場所と同じタバコ店での購入を呼びかけています。このチラシに似たつくりの試写状がありますが、同じくスクリーンフレンドがらみと思われる「魚が出てきた日」の変型チラシにも似た形状の試写状がありるので、ひょっとすると、このチラシも(シネサークルとしての)スクリーンフレンドと関係があるのかもしれません。とりあえず70年代の本作品のチラシをこちらにまとめております。

古澤氏の著書ですが、氏の博覧強記ぶりは凄いですし、おもしろいエピソードも数々あって、興味深く読むことができましたが、ジブリの社内誌の連載だからかもしれませんが、ご本人の言いたいことの語りおろしだけで終わってしまっていて、聞き手の突込みの甘さに少々不満を感じます。これだけの人なのにもったいない。

別に山田宏一との軋轢やスターウォーズの公取委勧告について聞け、とは言いませんが、興行的な成功作の話だけではなく、日本では苦戦したメル・ブルックスについての苦労話とか、別名義でかかわった初期の角川作品の宣伝についても知りたいところです。

さて、この本を読んでいるあいだ、ず~っと頭の中で鳴り響いていたのが、その昔土曜日の夕方にテレビ朝日でやっていた「ハリウッド映画大集合」という番組のオープニングのファンファーレ。「ハリウッド映画」といいつつ、紹介されるのは制作したFOXの作品ばかりで、「ワシがハリウッドの歴史を作った」といわんばかりの内容に、時々「そりゃぁムリ」と突っ込みつつも、ビデオなどなかった時代、結構楽しんで観ていた記憶があります。

今ではすっかり忘れられた存在らしく、ネットで調べてもほとんど情報がありませんでしたので、自分なりに放映リストを調べてこちらにまとめてみました。正確さに欠けるきらいがありますが、覚えている方のご参考まで。

2013年8月10日土曜日

3月に観た映画(後編)

周回遅れがヒドくなる一方ですが、備忘録、備忘録。

エンド・オブ・ザ・ワールド」。久々にキーラさんが観たいなぁ、と思って出かけたのですが、これは行ってよかった。

監督さんは30代の方なのに、何だこの選曲センス。タイトルから「17歳のカルテ」で印象的な使われ方をした、スキータ・デイヴィスの歌でも使っているのかと思いきや、さにあらず。冒頭のビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」の皮肉いっぱいな使い方(しかも後でパンフを読んだら本当のスティーヴ・カレルの奥さんが演じている)でのせられ、大滝詠一の元ネタである、ウォーカー・ブラザース、で、極めつけはハープ・アルバートの「ジス・ガイ」と来たもんだ。この曲大好きで、昔よく聴いたなぁ…すっかり別人になったウィリアム・ピーターセンの客演も嬉しかったです。

レコードの音の厚みのよさをしみじみと語る映画をブルーレイ上映で鑑賞するのはちょっと残念ではありますが、昭和のSF少女マンガを思わせるストーリーも心地よく、すっかりゴキゲンな気分で映画館を後にしました。地球が滅ぶ話ですが。

クラウドアトラス」。トム・ハンクスとハル・ベリー主演、と聞くと、普段ならつい敬遠してしまうのですが、六重構造のストーリーってヤツに惹かれてチャレンジ。

何といいますか、六色の割子蕎麦を食べているような映画でして、それぞれの蕎麦に違う味付けをしているものの、一皿としては足りないし、全体としては似た印象で、満足感もあまりなかったなぁ、と。エンディング・クレジットのひとり6役のネタばらしは面白いけれど、役の割り当てに意味があったとも思えないのがつらいところ。

それでも「ジャンゴ」より退屈せずに長時間を観通せたのは、よくも悪くもウォシャウスキー監督の「軽さ」があってのような気がします。この手の題材を、日頃縁遠い「巨匠・異才」の監督さんが仕上げていたら、評論家絶賛の傑作になるのでしょうが、果して自分が観通せる作品になったかどうか。

劇場版 魔法少女まどかマギカ」。この種のアニメはまったく知識がないのですが、ネットで評判を知って、前後編のイッキ観に挑戦。

合計4時間近くですが、一話20分×全12話と考えると、総集編というより繋ぎ目なしのリミックス一挙上映会なのかも。一本の作品として構成を大きく手直しをせずに、エピソード順に淡淡と話が進む感じの展開。

お話は「ポストモダンやねぇ(←意味不明)」.という感じで、若ければ、ひょっとするとハマってしまうのかもしれない内容でしたが、アニメ特有(?)のお約束演出(キャラクターや背景設定の造形)に不慣れなオッサンにとってはギャップは否めず、社会科見学しているような感覚からは抜け出せませんでした。後半の時間SF調はなかなか魅力的なんだけど、その理屈を支えるのが「魔法」だもんなぁ。

フライト」。どうも最近のハリウッド作品は、SFX工房(という言葉も死語かもしれませんが)のプレゼンかよ、と思うような派手なCG・合成演出に逆にシラけてしまうのですが、さすがにゼメキスのような百戦錬磨の方だと、さじ加減を心得ている感じで、デンゼル機長の離れ業飛行(とその後)の見せ方とかは上手いなぁ、という言葉しか出てきません。

久々にその手の特撮とドラマをきちんと融合させたハリウッド大作を観た、という満足感を味わいました。この作品や5月に観た「リンカーン」と比べると、「アルゴ」はヒヨっこだよなぁ。

事件の真相を描ききっていないという批判もありますが、自分はデンゼル・ワシントン演ずる機長の深層心理を中心に映画を観ていたので、割と後半の展開にもすんなり納得できました。まぁ、あの宣伝文句だと、白黒つけろよ、という意見もわかりますが。ただ、宗教面でも深い解釈ができそうな演出がされていましたが、その辺はちょっとわからないです。

同僚の子持ちのCAの女優さん、どっかで観たことあるな、と思って後で調べたら、「ディアボロス」の悪魔の弁護士ビルの奥様連中のお一人でした。

2013年7月20日土曜日

スクリーン・ビューティーズVol.1 オードリー・ヘプバーン

9月28日より新宿ピカデリー他全国で。
「午前十時の映画祭」の影響か、旧作の特集上映も少しづつ増えているよう。オードリーも久々に特集上映が組まれるようで嬉しい限り、といいたいところですが、当地に来る予定はなし。3本とも観ているので、あきらめもつくのですが、「パリの恋人」は大画面で再会したかったなぁ。

オードリーは80年代後半から90年代前半あたりのヘラルド・クラシックスで何度も上映されていたので、油断して観ていないままの作品が何本もあって、今の時代、DVDを借りれば、フォローは余裕で可能なのですが、どうも家で映画を観るのは落ちつかない人間なので、「いつか映画館で…」と思ってそのままになってしまっております。まぁ、当節のシネコンはビスタのスクリーンに上下の黒味を残してシネスコ作品を上映するというレターボックス上映(?)とかを平気でやってくれるので、映画館も家のテレビみたいになってきていますが。

ボヤキはこれくらいにして、上述のヘラルドによるオードリーの特集上映の手持ち分をこちらでちょっとまとめてみました。あくまでオードリーの作品のみの特集上映で、これだけでも軽く20種類を超えるんだから、やはり大したものです。

2013年7月16日火曜日

愛情物語(三越文化劇場版)

 東京、大阪、名古屋、札幌と比べると情報が極端に少ないのが神戸の「三越文化劇場」ですが、今回別のネタを調べるため「プレイガイドジャーナル(ぷがじゃ)」のバックナンバーを図書館で眺めていたところ、少しだけ分ってきたので、サクッとご報告。

どうも映画を上映していたのは1982年4月から84年1月末までのようで、他の劇場より活動期間は短かったようです。といいますか、三越神戸店自体が84年2月に閉店してしまっているので、仕方ないところ。

ひとまずラインナップをこちらにまとめてみましたが、「ぷがじゃ」は月刊誌でしたので、情報の正確性は万全ではなく、例えば83年10月は「マイ・フェア・レディ」になっているのですが、実際には「アラビアのロレンス」が上映されている…といった感じ。あくまで暫定版ということで、ご了承ください。

自分が持っているのは画像の2作のみ。この2種ともB5二つ折り(「イノセント」はそれよりさらに小さい)になっているのですが、不思議なことに二つ折りでありながらなぜか裏面は無地になっています。

配布が通常と異なっていたのかな?何かとの折り込みだったとか?もしご存知・ご記憶の方がいらっしゃいましたらご教示いただければ幸いです。

秘蔵!洋画チラシ全集」には上述の「アラビアのロレンス」と「普通の人々」が掲載されているのですが、それ以外は見かけたことがありません。他には出なかったのでしょうか。

ラインナップを見ると、出ていたらいいなぁ…と思う作品(「ピクニック」とか)もあったりするのですが、実際はどうだったのか。発掘(?)を期待したいところであります。

2013年7月9日火曜日

3月に観た映画(前編)

ぼやぼやしていると、何を観たかも忘れそうなのでメモ。

世界にひとつのプレイブック」。「これが亀田家を舞台にしていたものなら感動したのか?」と自問自答しつつも気に入った「ザ・ファイター」の次がこれだと、どうも「グッドフェローズ」の後の「カジノ」というか、焼き直し感が拭えません。同じテーマを追求し続ける作家ということなのか。

終盤のダンス・コンテストは、前作のボクシングに比べると、目指すのが「及第点」という微妙な線で、観る側としてはポイントが掴めず、それを補うために用意した(?)「コンテストにちゃんと出場するのか」というスリルも、主人公のトラウマ歌曲「マイ・シェリー・アモール」と同様、中途半端。家族劇という面では、デ・ニーロがデ・ニーロにしか見えず、家族という感じがしなかったしなぁ。

エンディングの鮮やかさは見事だけれど、全体的には世間の評判ほどとは思えませんでした。「薬を飲むと太る」とか、個人的にグサッと来る台詞・描写もいくつかあったのですが。

ダイ・ハード ラスト・デイ」。ビル→空港→街→全米、とスケールのインフレが続き、さすがに次は宇宙じゃねぇよな、と思ったら、海外という穏当な展開。

とはいえ海外に「出かける」となると、このシリーズの魅力である「主人公が運悪く陰謀に『巻き込まれる』(ついでに陰謀を謀る方も想定外の存在である主人公に邪魔されて狼狽する)」というパターンにならなくなってしまうのは致し方ないところ。

主人公、妻、助っ人の警官が事件によって本来の自分(と書くとクサいけれど)を取り戻すサブストーリーが第1作を傑作にしたと思っている自分にとって、今回の親子の復縁劇は好感が持てて、3や4よりは面白かったのですが、そうなるとなおのことボニー・ベデリアの不在が残念でなりません。

ジャンゴ 繋がれざる者」。流れ者のガンマンが凄腕で…という設定はこの種の映画の定番ですが、このジャンゴのように「奴隷でした」というのを見せてしまうと、「凄腕になるまで」が必要なんじゃないの?と思ったのは俺だけか。ジェイミー・フォックスも「キャプテン」のイガラシくんみたいな顔してるんだから、特訓くらいせぇよ。最後の方で「すごい天才なんだぜ」みたいな台詞があったような気もしたが、いい訳臭い。

アメリカの客ならビールとポップコーン片手に血しぶきと会話の丁々発止(ディカプリオほか悪役陣は良かった)を延々と楽しめるのかもしれませんが、KKKのくだりがモンティ・パイソンの日本人には面白さがつかめない会話スケッチみたいに見えた自分には、ダラダラ長いだけの作品で、これなら家でマカロニのDVDを2本見たほうがいいや、というのが正直な感想。奴隷制批判の描写で褒める向きもあるようですが、銃をあれだけ肯定的にぶっ放しておいてそんなこといわれても…です。

いまひとつ満足できない作品が続いていたのに歯止めをかけてくれたのが「アルバート氏の人生」。歴史の空気と人生の重荷を感じさせてくれる出演者の芝居、土地と生活を感じさせてくれる情景描写。これはしみじみ良かったです。

パンフを読むと、もともとはグレン・クロースが新人の頃に演じて名を上げた舞台劇で、映画化は念願の企画だったそう。思い出してみれば、初期の「再会の時」や「ガープの世界」といった作品でもクセのある役どころをしていたので、この芝居での評価がオファーにつながっていたのかなぁ、と思ってみたり。

mamiyaさんの紹介がなかったら、間違いなく「あぁ、ジェンダーものね。関係ねっす。」となっていたところでした。不明を恥じつつ感謝です。