おことわり

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2014年3月24日月曜日

こころの山脈

先月に観た映画の話の次が正月に読んだ本の話、というのもちょっと恥ずかしいのですが。

われらモスクワッ子」と同様、この「こころの山脈」も作品をよく知らぬまま入手したもの。チラシを読んでみると、「本宮方式」という町ぐるみで映画作りに取り組んだ作品のようで、大手5社の寡占体制が陰りを見せていた当時、かなり注目され、キネマ旬報1965年決算号の映画界重大ニュースでは映画の製作そのものが第10位にランクイン(ちなみに第1位は松竹京都撮影所の閉鎖、第2位は映画人口の4億人割れ)。作品の評価も、翌年の邦画ベストテンに第8位と、かなり高かったようです。

住民参加の映画というと、それ以前にも「ここに泉あり」とかもありましたが、教育活動(もともとは「太陽族」映画への対抗)と密接だったのが新しかったのかな。ともあれ、これに似た「住民参加」「製作費を前売券で」といった手法は現在に延々と引き継がれていますね。

ちなみにこの映画に出演した生徒たちや主演した山岡久乃が再度集まって1997年に「秋桜 コスモス」という映画(ストーリーは無関係)が作られています。全くの余談ですが、音楽担当は件の「現代のベートーベン」氏。

「本宮方式って何」、とネットであれこれ調べていて行き当たったのが、今年開館して100年目を迎えた本宮映画劇場。昭和38年に閉館したのですが、館主の方が再開を期して今もなお、映写機や建物のメンテナンスをされているという、稀有な存在。「旅する映写機」というドキュメンタリー映画でも紹介されています。
貴重なビラ・チラシ類も2ページほど掲載
されていますが、残念ながらモノクロ。

こちらの映画館は、本宮方式とは異質(というか真逆?)な大衆娯楽専門館だったようですが、館主の田村氏はエロ・グロ含めた当時のポスター・チラシ等はもちろん、上映禁止になった武智鉄二の「黒い雪」(実は上記キネ旬決算号の重大ニュースの第3位はこの問題)といった貴重な作品の「いいところ」をまとめたフィルム等をしっかりと保存されているという、凄いお人。

そんな田村氏をはじめとした全国各地のユニークな独居老人たち(映画関係では早稲田松竹の館内のオブジェを作っているお掃除担当の方も登場)の横顔を追いかけているのが、「独居老人スタイル」という本。筆者は都築響一。うわっ懐かしい(すいません)。その昔、今はなき「マルコ・ポーロ」という雑誌に都築氏が「サルマネクリエイター天国」という商業アートのパクリを告発する(例えばこのCDジャケットのデザイン元ネタはこれ、とか)連載があって、毎月楽しみにしていたのですが、今はこういう仕事をされているとは。さまざまなライフスタイルをルポしてきた都築氏だけあって、登場する方への眼差しも暖かく、一気に読ませます。

自分は文中で紹介されている方たちほど突き抜けて生きていくことはできないし、独居もいいことばかりではないと思いますが、間違いなく「独居老人」に向けて舵を切っている者として、少し勇気をいただいた一冊でありました。

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