おことわり

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2014年3月31日月曜日

チャップマン報告(レポート)/世界女族物語

「シネグッズ・エクスプレス」でも取り上げ
られた珍品ですが、コンディションの悪さと
館名がない(あってもスタンプか?)こと
も手伝って、運よく入手できました。
本日は名づけて「夕刊斜め読み」エントリー。

数が少ないといわれるチラシの発生理由に「急遽公開が決まって、あまり刷られていない」というのが挙げられますが、「チャップマン報告(レポート)」もそのひとつかも。

昨日も図書館で昔の新聞縮刷版を見返していたところ、1962年12月15日朝日新聞夕刊「土曜コーナー」に26日公開予定の「世界女族物語」がイタリア国内の検閲に引っかかって輸入が遅れ、その穴を「チャップマン…」が埋める、とありました。7人いる検閲委員のうち、6人まで異議なしだったものの、議長が強硬に反対したとか。この年は9月公開の「世界残酷物語」が大ヒット、東宝としてはその余勢を買って、正月の日比谷映画も「女族」でひと稼ぎ、と目論んだのでしょうが、思わぬところで足をすくわれてしまったよう。

まぁ「チャップマン…」も人妻という「女族」の夜の生態を描いた記録映画といえなくもないですが、新年早々こういった話題の作品を選ぶほど、当時の世の中は進んでいなかったようで、2週間であえなく終了。続く「ジプシー」(これもチラシはあまり見かけない)も同じナタリー・ウッドの「ウエスト・サイド物語」のロングランを横目に10日間で終了、と62年は「ファニー」以外めぼしい作品が全くなかったワーナーさんと、正月興行の目玉「史上最大の作戦」(製作は同じダリル・F・ザナック)を松竹・東急系に取られた東宝さんにとっては口惜しい年末年始だったのでは。

「大全集」とは色違い。東和でよくある
単色版をB5二つ折りにしたような作り。
ちなみに2月23日付けの同コーナーでは「不振の洋画続出」と題し、不入りによる打ち切りで、次の作品が宣伝がまだきいていないうちに公開され、また打ち切り…という悪循環が続いていると書かれており、「橋からの眺め」「悪名高き女」「ライオン」「電話にご用心」といった作品が挙げられています。

「世界女族物語」ですが、翌年3月9日に公開。当時の広告には「ヤコペッティは検閲当局の場面カットの要求を頑として受け付けず、その製作意図を傷つけるものとして二ヵ月半闘い抜き、逆に場面追加によって、公開という勝利を掴みました。」と謳っておりますが、さ~て、実際のところどうだったんでしょうか。

しつこく3月9日付けの同コーナーによると、初日の日比谷映画ではスクリーンで世界の女性を見せるばかりでなく、「生きた女性に観客サービスをさせる」として、新聞広告で募集した外国女性3人、日本女性に5人に映画で登場するロスの新聞の売り子やガソリンスタンド嬢と同じショートパンツにセーターを着せ、プログラム売りや劇場案内で活躍してもらう、という企画を実施。東和のアイデアマンは「これこそ立体的サービス」と自慢しているそうな。

「立体的サービス」かぁ、「ファンタズム」のビジュラマ方式の原点がここにあった訳ですね(←違います)。

ともあれ、この3月の東宝は「女族」はもちろん、「天国と地獄」「アラビアのロレンス」「わんぱく戦争」と各館大当たり、正月を上回る新記録の月だったようであります。

2014年3月24日月曜日

こころの山脈

先月に観た映画の話の次が正月に読んだ本の話、というのもちょっと恥ずかしいのですが。

われらモスクワッ子」と同様、この「こころの山脈」も作品をよく知らぬまま入手したもの。チラシを読んでみると、「本宮方式」という町ぐるみで映画作りに取り組んだ作品のようで、大手5社の寡占体制が陰りを見せていた当時、かなり注目され、キネマ旬報1965年決算号の映画界重大ニュースでは映画の製作そのものが第10位にランクイン(ちなみに第1位は松竹京都撮影所の閉鎖、第2位は映画人口の4億人割れ)。作品の評価も、翌年の邦画ベストテンに第8位と、かなり高かったようです。

住民参加の映画というと、それ以前にも「ここに泉あり」とかもありましたが、教育活動(もともとは「太陽族」映画への対抗)と密接だったのが新しかったのかな。ともあれ、これに似た「住民参加」「製作費を前売券で」といった手法は現在に延々と引き継がれていますね。

ちなみにこの映画に出演した生徒たちや主演した山岡久乃が再度集まって1997年に「秋桜 コスモス」という映画(ストーリーは無関係)が作られています。全くの余談ですが、音楽担当は件の「現代のベートーベン」氏。

「本宮方式って何」、とネットであれこれ調べていて行き当たったのが、今年開館して100年目を迎えた本宮映画劇場。昭和38年に閉館したのですが、館主の方が再開を期して今もなお、映写機や建物のメンテナンスをされているという、稀有な存在。「旅する映写機」というドキュメンタリー映画でも紹介されています。
貴重なビラ・チラシ類も2ページほど掲載
されていますが、残念ながらモノクロ。

こちらの映画館は、本宮方式とは異質(というか真逆?)な大衆娯楽専門館だったようですが、館主の田村氏はエロ・グロ含めた当時のポスター・チラシ等はもちろん、上映禁止になった武智鉄二の「黒い雪」(実は上記キネ旬決算号の重大ニュースの第3位はこの問題)といった貴重な作品の「いいところ」をまとめたフィルム等をしっかりと保存されているという、凄いお人。

そんな田村氏をはじめとした全国各地のユニークな独居老人たち(映画関係では早稲田松竹の館内のオブジェを作っているお掃除担当の方も登場)の横顔を追いかけているのが、「独居老人スタイル」という本。筆者は都築響一。うわっ懐かしい(すいません)。その昔、今はなき「マルコ・ポーロ」という雑誌に都築氏が「サルマネクリエイター天国」という商業アートのパクリを告発する(例えばこのCDジャケットのデザイン元ネタはこれ、とか)連載があって、毎月楽しみにしていたのですが、今はこういう仕事をされているとは。さまざまなライフスタイルをルポしてきた都築氏だけあって、登場する方への眼差しも暖かく、一気に読ませます。

自分は文中で紹介されている方たちほど突き抜けて生きていくことはできないし、独居もいいことばかりではないと思いますが、間違いなく「独居老人」に向けて舵を切っている者として、少し勇気をいただいた一冊でありました。

2014年3月16日日曜日

華麗なる週末/クリスマス・ツリー

相変わらずのご無沙汰です。

まずは追記情報。チョコさんのブログの情報により、007のセットチラシのエントリーの資料室で記した「死ぬのは奴らだ」の「ユナイトマーク抜き」版が「ムーンレイカー」公開時に中日シネラマ劇場で配布されたものと判明しました。「ウエストサイド物語」の1973年リバイバル版(デザインは1972年版と同じ)入手と合わせ、追記しております。チョコさん、遅くなってしまい申し訳ありませんが、いつも情報感謝です。

さて、こちらも先月の話で恐縮ですが、偶然に偶然が重なって、東京で「華麗なる週末」を観ました。フィルムセンターの企画上映で、「ロイ・ビーン」含めて気にはなっていたものの、距離とスケジュールであきらめていたのですが、帰省帰りの有休にピタッとはまる僥倖。

いやぁ、よかった。フィルムセンターで映画を観るのは初めてだったのですが、画面の大きさと客席からの角度が昔の文芸座を思い出させ、テクニカラーの色調も相まって、すっかり名画座気分。正直なところフィルムとデジタルの違いが分かるような眼力はないのですが、この色合いは「フィルム~」って感じで、眼福眼福。作品もノスタルジックで、脇に回ったマックィーンも好演。しかしこの時期のマックィーン氏、「ブリット」にこれに、「栄光のル・マン/ライダー」と、自前のプロダクション使って乗り物愛全開ですな。

画像のチラシは「クリスマス・ツリー」との二本立てのもの。両作品は1969年12月に封切られ、東京や大阪ではそれぞれ単独に公開されていますが、名古屋(上)では二本立て上映。東京(下)でも翌年3月にTYチェーンで二本立て公開されていますが、チラシ中央の帯のコピーが修正されています。ここまで手を入れているケースは珍しいかも。

フィルムセンターの話が出たので、「モダン・タイムス(72R)」のコメント欄でじゅまんじさんからも情報提供いただいている企画展のお知らせも。

「赤松陽構造と映画タイトルデザインの世界」と題し、永年日本映画のタイトルデザインを手がけた第一人者である赤松氏の作品を中心に日本映画のタイトルデザインの歴史もからめて展示していくようです(4月15日~8月10日)。

チラシの「アントキノイノチ」「ウォーターボーイズ」を見てお気づきのとおり、広告の題字デザインではなく、映画本編のタイトルデザインについての企画展ですが、興味を惹かれる内容で、イベントも土曜に3回ほどあるようなので、こちらもできれば1回は足を運びたいなぁ、と思っております。