おことわり

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2013年12月25日水曜日

6月に観た映画

やっぱり年内に追いつくのはムリでしたが、それでもしつこく。

午前十時で「慕情」。冒頭の空撮からしてシネマスコープの魅力満開。観光映画の色彩が強いメロメロのメロドラマで、中国に関する描写は時代を感じさせるし、ややご都合主義的な展開もあるけれど、ジェニファー・ジョーンズの名演で一気に見せます。

W・ホールデンが「ここ(香港)は考えるのではなく感じる所だ。」みたいな台詞を喋っていて、字幕のせいかも知れないけれど、つい「燃えよドラゴン」の元ネタかな、と思ったり。

シュガーマン 奇跡に愛された男」。地元アメリカでは全くの泣かず飛ばずだったシンガーソングライターの残したレコードが、本人の知らぬうちに流れ流れて南アフリカで大評判、反アパルトヘイトの象徴になっていた、という嘘のような本当のお話のドキュメンタリー。題材はかなり面白いのですが、記録映画にするにはちょっと時機を逸した感もあり、ドラマ化した方が良かったのかも、という気が。

主人公のシンガーが黒人ではなかったことが、当局の規制をすり抜け、南ア国内の反アパルトヘイト支持の学生たち(白人)から広まるという展開を生んだとのことでしたが、それを観ていて思い出したのが、かつてフィルムセンターのギャラリートークで聞いた元ヘラルドの坂上直行氏の「『小さな恋のメロディ』は南アフリカでもヒットした。」という発言。あの作品も確かキャストは全員白人だったはずで、内容は反体制を醸し出しているし、製作時期(1971年)も近いので、似た因子を持っていたのかなぁ、と感じました。

グランド・マスター」。ありゃぁ、これはすっかり忘却の彼方、今となってはほとんど覚えておりませんな。

冒頭の雨中の拳闘シーンとかは色調は美しかったけれど、クローズアップが多すぎて、今ひとつ何しているんだかわからないって感じ。お話そのものもグダグダで、史実(登場人物の基礎知識)を知らないと意味不明のエピソード(床屋のシーン)もあったりして、映像の美しさには眼を見張るものの、それだけではなぁ。キャラクターは立ってても、それ以上の踏み込みがなかったような印象が残っております。日本は悪役ではありますが、案外控えめな描写。

ちなみに自分はウォン・カーウァイは初見であります。

オブリビオン」。この後に観た「エリジウム」もそうなんだけれど、作り手は未来社会のヴィジョンを手間暇かけてきっちりと構築して見せてくれるのに、観客である自分の琴線にはどうも響かないのが、我ながらもどかしい。

CGに麻痺しちゃって贅沢病にかかっているのだろう。好みの設定、世界観、ストーリーなのに、既視感の囚人と化してしまい、面白がれない自分が面白くないという無限ループの2時間。「ワンダー」が足りない、と批判することもできるんだろうけれど、それだけではない気もしました。リバイバルで観た「2001年」のスリットスキャンに圧倒された10代の感受性はもう戻らないんだな。

チラシはトム・クルーズ単独主演作にしてはいつもの顔のアップではなく、彼のハリウッドでのポジションも少しづつ変化している予感。


スプリング・ブレイカーズ」。宣伝のビジュアルから「ワイルドシングス」ぽい、ティーンの犯罪映画を(エロ含みで)期待したのですが、「ワイルド」と比べるとかなり青春モノ寄りで、物語もひねりがなく、やや肩透かし。

青春モノとしてはスプリングブレイクの乱痴気騒ぎのショットとかいい雰囲気だし、少女たちが切なさを吐露する部分もいいといえばいいのですが、どうも中盤からの櫛の歯が欠けていく展開が、何の工夫もないというか、適当というか…ラジオの深夜番組で「○○放送(←地方局名)をお聴きの方はこの時間まで」といわれているような感覚。まぁいずれにせよブリトニー・スピアーズあたりをネタに使っている時点で、自分のようなオッサンは判ったふりしちゃいけませんな。オッパイに釣られて失敗、の一席。

リアル~完全なる首長竜の日~」。黒沢清監督は昔DVDで観た「回路」がどうにも難解で、以来何となく敬遠していたのですが、メジャーなキャストとSFっぽい掴みに引かれて行ってみた。

う~ん、個人的には「ブレインストーム」的な展開を期待していたのですが、どうも出だしから雰囲気が変で、案の定の♪心の旅がはじまるぅ~な流れに、テンション急降下。好きな人にはたまらないのでしょうが、どうもこの手は苦手でして。ひたすらどんより。主演の二人も頑張っているんですが。

最後に使われるCGも、それまでの異世界演出に合わせた色調、といえるのかもしれないけれど、ちょっとなぁ。

炎のランナー」。初公開の時、テレビの映画紹介コーナーの映像(競技中に転倒するシーン)を観ただけで、なぜか涙が出たという、後にも先にもない不思議な経験をした作品。

30年ぶりの再会でしたが、もともとが昔の話のうえ、奇をてらった演出もないことから、さしたる違和感もなく楽しみました。音楽は当時は斬新だったかも知れないけれど、もはや古典だもんなぁ。画質もデジタル臭をあまり感じず、満足満足。

この年齢になって観返すと、スポーツ映画としての美しさだけではなく、イギリスの階級社会の悪弊、アマチュアリズム、さらにはハリウッドにおけるユダヤ系の影響力の強さ等々、思いをめぐらす点が多々あって、より一層味わい深い2時間でありました。やっぱオリンピックは欧州のものだよなぁ。

「炎のランナー」で20年代づいたのか、空いた時間に「華麗なるギャツビー」へ。原作もレッドフォード版も押さえてないのに我ながら無謀だな。

バズ・ラーマン監督は今まで一本も観ていないのですが、昔「ムーラン・ルージュ」の予告で驚かされた派手な演出が、この作品のパーティのシーンでも繰り返されていて、それなりに面白かったのですが、ドラマ部分になると、どうも今ひとつ。特にクライマックスのプラザホテルのシーンは物足りなかったです。デイジーの夫役がちょっと弱かったかなぁ。ネットを見ると、当初はベン・アフレックやブラッドリー・クーパーの名前が挙がっていたようですが、その辺だったら見応えあったのかも。

それにしても、ジェイソン・クラーク、今年はよく見かけたなぁ。

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