しつこく感想の続きをば。
「ラストスタンド」。「ダイハード」の10作目あたりがこうなりそう、みたいなお話で、コンパクトにまとめられた肩の凝らないアクション篇。婆さんがヘルプするシーンとかを観ると、もうちょっと住民たちの活躍があってもいいのかな、とも思いましたが、敵方にとっては主人公の住む街は単なる通過点だもんな。「悪党vs住民」の広がりにはならないか。
シュワルツェネッガーはもともと芝居が上手い人ではないので、台詞回しとかはちょっとツラい感じがしましたが、最後の格闘で体を張った大奮闘をみせてくれて嬉しかったです。興行的にはかつての勢いは望めないのでしょうが、これからも元気な姿を見せて欲しいもの(ヴァンダムもボルボのCMで頑張ってるしね)。
「L.A.ギャングストーリー」。う~ん、これだけ硬派なメンツが揃っていて、やっていることが「J.エドガー」劇中のFBIを礼賛したテレビドラマみたいなノリになっちゃっているのはどうしてなんですかね。画面の色使いが「ディック・トレーシー」あたりを意識しているのかな、とも思いましたので、コミックか何かの雰囲気を狙ったのかもしれませんが、「L.A.コンフィデンシャル」に魅せられた自分としては、お子様向けの安っぽさにしか感じられず、どうも納得できません。
それにしても「ギャングストーリー」って邦題はねぇだろ。これじゃギャングが主役じゃん。原題のsquadはどこに消えた?チラシもHPも原題の表示がないなんて、昔の東宝東和みたいで、変な意味で嬉しくもありますが…
ワーナーは「ゼロ・グラヴィティ」の2種類目のチラシがマークどころか社名すら載せていないし、何を考えているのかな(無印良品ですか?)。
「レイダース/失われたアーク」。この辺はかつて廉価版のビデオを繰返し観ていたので、懐かしさとか新発見とかはないのですが、大きな画面といい音響で観ることができるのはやっぱりありがたいです。これでしょっぱなの岩の玉が支柱つきのオリジナルだったらいうことないのですが、それは無理ですね。
観ながらずっと考えていたのは、何だかんだいってこの時代はまだまだアナログだったんだなぁ、ということ。4作目とかはすっかりCG大会で、画面は派手だけれど、「はいはい。凄いですねぇ(棒)」と、嫌な客になってしまったのですが、1作目の車の追跡シーンは「そういやインディを殴るオッサン、スタントマンが直にやったんだったけか(記憶違いかも)」とか考えつつも「お、スゲェ」と身を乗り出して観てしまいます。公開当時は、アーク開封の特撮ばかり「凄い凄い」と思っていたのに、変われば変わるものだ。
「リンカーン」。ダニエル・デイ=ルイス、3度目のオスカー、って一人でそんなに貰っていいの?こりゃ生涯ふたケタ受賞あるで、と少々斜に構えて出かけましたが、そんな意地悪な見方を吹っ飛ばす熱演で、失礼いたしました。別に本人が猟賞活動している訳じゃないし。でも、最近「REDリターンズ」の予告編を観る度にマルコヴィッチが1回も貰えていないという不条理を感じるので、まぁいろいろと難しいですね。
本編ですが、生涯を俯瞰する伝記的なものではなく、奴隷解放に関する法案の審議・採決に的を絞った構成で、最近のアメリカ議会のねじれ現象も彷彿させて興味深く、非常に面白く観ることができました。陳情を受ける大統領の姿は「ゴッドファーザー」冒頭のマーロン・ブランドみたいで、ロビー社会ですなぁ。「政治という仕事は、情熱と判断力の両方を使いながら、堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていくような仕事です。」という言葉を思い出した一編。
中二病を発症して数十年、日本映画の食わず嫌い(特に情緒的な作品)を続けてきましたが、寄る年波による心境の変化か、木下恵介生誕100年を記念した上映を当地のMOVIXでもやっていたので、時間が合った作品を2本ほど。
「二十四の瞳」は終わってみれば2時間半の大作だったのですが、構成がしっかりしているのか、少しも飽きさせることのない、見応えのあるドラマでした。戦後10年も経たない製作ということもあってか、「戦争はもう懲り懲り」というスタッフ・キャストの感情が生々しく伝わってきて、昨今の教科書的な、あるいは政治的な意図が見え隠れする作品とは別物ですね。
「楢山節考」は実験色の強い作品で、今の眼から観ると、逆に古臭さを感じなくもない点もあるのですが、セットの懲り方も半端なく、日本映画の黄金期の力強さが伝わってきます。作品のテーマが当時の自分の心境と重なる、という個人的な事情もあったので、感慨深い鑑賞でありました。
と、いうことで、もう少し日本映画も、特に古いのは観ておきたいなぁ、と思うのですが、機会はなかなかないですね。新作は…というと、予告編を観る限り、映画より「日本映画ダメ絶対bot」の方が面白く思えてしまうのが困ったものです。
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