2012年11月10日土曜日

アルゴ/夢売るふたり

10月に観た映画の続き。
ティーザーぽいチラシで、一瞬マイケル・ムーアの
新作かと。これで客を呼ぶのは厳しいミッションか。
アルゴ」。冒頭のワーナーマークが懐かしく、イランの政情とアメリカとの関係を手際よくまとめた出だしも快調。実在の人物であるジョン・チェンバースの事務所に「怪奇!吸血人間スネーク」のポスターがドカーンと貼られているのも嬉しいです。

人質救出のために映画のロケハン隊を装うという、嘘みたいな実話の映画化で、いくらでも膨らませて演出できる題材ですが、地道にエピソードを積み上げていくのは前作「ザ・タウン」と同様で、この辺の手堅さ、リアリティ重視、俳優の芝居を優先した演出が評価されているんでしょうか、ベン・アフレックは。

と、観ている間は作り手の誠意を随所に感じて好感が持てたし、サスペンスの間の取り方がベタだったとはいえ、さほどの失速感もなかったけれど、いまひとつ心に残らなかったのは何故だろう。事件の全体像の紹介に終始して、主人公の人物像にあまり迫っていないからかな。いくつかのエピソードはあったにせよ、その程度の描写では最後の妻子との再会に感興は湧かないし。この辺、アフレックが「俺様映画」化するのを避けての配慮かもしれませんが。

と、思いつつも、大統領選挙の時節柄、最後のナレーションに「やはりこの映画の目的は『事件の紹介→米民主党の実績PR(人質救出と事件の情報公開)』かな」と感じるわけで、オバマのオの字も出ないにしろ、そこは正直白けます。

国を二分する「政治の季節」に双方の陣営がそれぞれの思惑であれこれ言い合うのは仕方ない話ではありますが、いくらなんでもこの作品を「今年最高」とか、ましてや「ポスト・イーストウッドはこの人」みたいに言うのはいい加減にせぇよ、と思います。日本のマスコミもその「祭」に乗ってどうするよ。空港の追っかけは「フェイスオフ」の序盤をちょっと思い出しましたが、そういえば「フェイスオフ」のDVDにデカデカと「今世紀最高の傑作」と書いてあって、思わずショップの店頭で「シェーッ」のポーズをしそうになったなぁ。褒めるにしても言葉を選んでほしいです。

夢売るふたり」。
西川作品は「ゆれる」に続いて二本目ですが、どうも話を練ることより「人間の本性」を描くのが好きな方みたいで。自己紹介に「趣味:マンウォッチング」と書くような女性に似た感じがするのは俺だけか。

で、今回はさまざまな女性の生態をウォッチングしておりますが、まぁ、長いわ。ひとりくらい端折ても問題なかったのでは。犯罪コメディ仕立てにしているのでしょうが、「ゆれる」が一見ミステリー仕立てにしていてもそれに徹していなかったのと同様、相変わらずスタイルだけだし。物語の暗転の演出手法はちょっと許せない。

それにしても松たか子ですが、夫に結婚詐欺をさせる女はラーメン屋や魚河岸で働かないと思うんだけど。いい子過ぎ。阿部サダヲ(好演)とのからみシーンをせずにオナニーやナプキン交換するのも何だかねぇ。喜ぶのは実話系週刊誌だけだと思うんですが。

移動撮影とかにいいシーンがあるし、出演者も好演、「人間の本性」が好きな方には楽しめるのかもしれませんが、こちとら現実でお腹いっぱいなので、今後もこういった路線ならもういいかな。

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