2013年11月4日月曜日

男はつらいよ 超大作(寅次郎恋歌)

左が東京、右が大阪のもの。ともにB6二つ折り。
東京では一般封切直前の12月24日まで上映されています。
前回のエントリー「007/ゴールドフィンガー」のリバイバルを2週間、と書きましたが、日比谷映画が2週間で、同時に封切った新宿プラザは4週間、日比谷映画を継いだ渋谷宝塚と池袋劇場は2週上映していましたので追加報告。
東京版の中面より。松竹の期待が
伝わります。大阪版も同じ文章
(「超大作」のまま)で掲載。

さて、「ウエストサイド物語」「ある愛の詩」のエントリーがらみで新聞縮刷版をダラダラとめくっていたところ見つけたのが「男はつらいよ 寅次郎恋歌」のロードショー告知。Wikipediaでは1971年12月29日公開となっていますが、これは松竹系の一般封切の公開日(同時上映は「春だドリフだ 全員集合!!」)で、実際には11月20日に松竹洋画系で一本立てで先行ロードショーされています。

当時の新聞広告には「『家族』『影の車』『人間の條件』や『ある愛の詩』でおなじみの丸の内ピカデリーで日本映画最初の喜劇ロードショー!」(11月5日付)「やったぜ寅さん!明日より丸の内へ進出!」(11月19日付)といったコピーが踊り、松竹の力の入れようがうかがえます。寅さんといえば、自分には「盆と正月」の定番、というイメージだったのですが、この時期(70、71年)までは年3作製作しており、この第8作がその定番=「更なる高み」への挑戦、松竹や山田監督にとっての大一番だったことが、このロードショー版のチラシの文章からもひしひしと感じられます。公開初日にはプレゼント付のアンケートも実施しており、松竹も客層が気になっていたのではないでしょうか。

結果は大成功、前作(奮闘篇)の動員92万6千人(これも充分凄いですが)から、一気に(一般公開とのトータルで)148万1千人まで客足を伸ばし、空前絶後のシリーズ映画としての地歩を固めた作品となりました。当時は大映が新作映画の製作をしないことを発表した直後(同年12月に破産)で、松竹としてはこの結果に安堵したのでは。
カラーのB5版
チラシファンとしてはこの東京版の「超大作」表示、正式タイトル決定前だから仕方がないとはいえ、一瞬「第1作では?」と錯覚させる罪作りな品。いまだに第1作としてオークションに出品するのを見かけますので、困ったものです。それにしても70年代の松竹作品には「超大作」という文字をよく見かけますが、「砂の器」や「八ツ墓村」あたりならともかく、「男はつらいよ」や「幸福の黄色いハンカチ」あたりも超大作っていうのはなぁ。気持は分かりますが。

「男はつらいよ」のチラシはこの第8作より前の作品群のハードルが異常に高く、特に初期の数作は老舗のショップでも扱ったことがないという話を聞きます。007のように「どんなものかは知っているけれど高くて手が出ない」のではなく、「そもそもモノがあるかどうか分らない」というレベル。8作以降でも地方版、特に80年代の関西版・民音版の二色刷りのチラシは人気が高く、こちらも集めるのは結構大変。これに「寅さんまつり」やタイアップも追いかけていくと、まさに「コレクターはつらいよ」に。さすが国民的映画ならではです。

2 件のコメント:

  1. チョコです。

    確かに「男はつらいよ」って超大作とは言えませんなぁ(笑)
    「黄色いハンカチ」もしかり・・・。
    松竹の大作の基準って何なんでしょうか。
    元々B級スタートで、最後までそんなに制作費がかかってるようにも思えなかったんですけどね。
    ただ自分は毎回の偉大なるマンネリがとても好きだったので盆と正月に寅さんがかかってないと寂しいです。

    チラシもこのシリーズの制覇は実質無理かと思いますんで、機会がある時だけゲットしてる感じです。
    民音版チラシは、名古屋では何故か劇場館名入りにも関わらず、劇場配布はせず民音事務局のみの配布だったそうです。
    通常版、地方版、民音版、その他タイアップ等々、全体がこれだけ掴めないシリーズも他にはないのでは?

    ちなみに初期の寅さんシリーズのチラシ、多分正規版はないと思います。
    今のところ、地方のビラ、館ニュースしか見たことがありません。

    では。  

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  2. チョコさん、こんばんは。
    コメントありがとうございます。相変わらず返事が遅れてまして、すみません。

    「超大作」という表現、一本立て興行もしくは洋画系先行上映作品の呼称かとも思ったのですが、「内海の輪」のような二本立て作品にも使われているし、いまひとつ基準が分りません。「鬼畜」(1978)あたりでは使われていないようなので、この辺りまでかなぁ。

    民音版は事務局で配布されていたのですか。東京音協とかも事務局配布だったらしいですから、数は限られますが、別柄ですから希少性がより高くなっちゃいますね。

    初期の寅さんの正規版はどうなんでしょうか。1970年の第3作と第4作は、公開期間が1ヶ月半くらいしか空いてないようなハイペースで作られていますから、確かに難しいのかも。「どこかにある」と、ツチノコを探す心境でいる方も多いのかな。

    いつもながら貴重な情報ありがとうございます。今後ともよろしくです。

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