2012年6月27日水曜日

別離

配給会社も強調する「観客賞」の多さが、作品の
普遍性を証明しています。ぜひシネコンで上映を!
週末にようやくこちらでも始まった「別離」へ。
いやぁ、これはいい。観終わった後に「良かった~っ」と伸びをしたくなったのは、新作では「ダークナイト」以来かも。全然傾向が違いますが。

よくもまぁ、この題材でここまで引っ張る物語が作れるものだと感心しました。登場人物の心理や行動は宗教的な面を除けば、ごく普通の市民のそれであり、突飛な行動もなければ、気の利いた台詞をはくわけでもない。彼らが直面するのはひたすら現実だけ。ひとつのトラブルにおける、誰にでもありがちな、心の弱さが生み出す言動が、各々の立場や居合わせた場所によって、家族の亀裂という誰も望まないレールに進んでしまう悲劇。そしてほのかに浮かび上がる社会の不条理。

この監督が巧いなぁと思うのは、物語の流れのリアリティの高さもさることながら、謎解き的な要素があるにもかかわらず、回想シーン等を一切見せず、物語を直線的に進行していくこと。このことで、観客自身も登場人物と同様に「事件が起きた時の記憶の曖昧さ」を共有し、話の展開に惹きこんで行く。そうした語り口を技巧と感じさせないところが、また見事。

それにしても。遠い昔、学生の頃に岩波ホールあたりで観た欧米以外の国の映画は、この作品で言えば家政婦側の視点で作られたものが多くて、日常と離れすぎていて敬遠していたのですが、いつの間にこんなに身近に迫る存在になっていたとは。時の流れとグローバリゼーション恐るべし、であります。

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