おことわり

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2013年1月30日水曜日

LOOPER/ルーパー/テッド

年が明けたら映画泥棒のCMがリニューアルされたけれど、増殖した泥棒君たちがとっても楽しそうで、あまり警告って感じがしないんですが、大丈夫なんですかね。ちなみに地元の美容院がこれのパロディCMを予告編前に流していて、ちょっと好きです。

で、新年一発目は外したくないなぁ、と思って世評の高い「LOOPER/ルーパー」に行ったのだけれど、期待値のハードルが高すぎたか、いまひとつ乗れずじまい。

未来の自分と対決するという設定は面白いし、近未来の枯れた雰囲気も良かったのですが、話の流れとして周囲のキャラクター(主人公の組織の連中や食堂のウエイトレス等々)にもうひとひねり、タイムトラベル的に意外な展開があるんじゃないかと思ったので、その辺の工夫なしにサイキック方面を膨らまされたりすると、「もうちょっと考えつかない?」「何か本筋から逃げてない?」と感じてしまったんですよね。BTTF第1作の、周囲のキャラクターまで引っくり返してしまうインパクトをつい期待するこっちが悪いのかもしれませんが。

主人公の仕事のシーンや虐待が将来の自分に反映するところとか、面白い箇所もあったし、ラストも納得なんですが、どうも物足りない気持が先に立ってしまいました。
予告編のピストンレジ打ちが気に入った「テッド」を初日レイトで。うわ、普段は座席表示が◎ばかりのシネコンが、△になるほど埋まった…

でも、ほぼ満員の場内が爆笑の渦、とならないのがツラいところ。予告以上に過激なR15ネタもこちらでは反応は今ひとつで、いちばん受けてたのが、その手のネタではなく、テッドの上司のリアクションだもんな。

予備知識なしで見たので、80年代のテレビ・映画ネタはここまでやるか、という感じで詰め込まれていて、ゲスト出演含めその辺は結構楽しめましたが、若い人にはちょっとキツそう。これで外国のコメディが苦手にならなければいいのだけれど。

話全体のつくりは案外雑で、下品上品抜きにしても、決してほめられた出来とはいえませんが、日本なら「劇画オバQ」になる話を、こういう作風に持っていけるのはさすがハリウッドだと思うし、ネタからみても40代以上に向けて作って、しかも当ててしまうところにアメリカの観客層の幅広さを感じてしまいました。

それにしてもこの2作といい、「エクスペンダブルズ2」や「007スカイフォール」といい、作り手の中国10億市場への目配せがひしひしと感じられ、GNPの順位が転落したことを実感しますです、はい。

2013年1月27日日曜日

サン・スーシの女

ブログを始めるようになって、以前から気になっていたことを調べるようになったのですが、1984年公開のヘラルド・エース配給作品「サン・スーシの女」のイラストもそのひとつでした。

80年代中盤になると、都内にミニシアターが増えてくるのですが、これもキネカ大森のオープニング作品で、他にもいくつか同じ方が手がけたイラストのチラシがあって、この路線が続くのを密かに期待していたのですが、残念ながら3作ほどで終わってしまいました。

描いたのは毛利彰。60年代に伊勢丹の広告で活躍、70年代にフリーとなり、広告や本のカバー、挿絵等で活躍された方で、「歴史群像」の武将の肖像画、角川版の「火の鳥」の表紙、80年代後半のミスドのノーマン・ロックウェル調のボックスアートなどをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。

惜しくも毛利氏は2008年に亡くなられたのですが、「実験人形ダミー・オスカー」で有名な叶精作のブログによると、朝日新聞の追悼記事(残念ながら縮刷版では該当記事は見当たらず)に、「『芸術という言葉が嫌いだ。銭湯の富士山を立派に描く人を尊敬する。自分の仕事はそういう仕事』...と語った。注文を受けて売れる絵を描く。いずれは消える商業イラストをきちんと仕上げる。それを誇る職人だった。」とあったそうです。

そう思ってこのチラシをあらためて観てみますと、実はロミー・シュナイダーの図案はその後発売されたビデオのジャケット写真と同じものを基にしているのですが、広告として必要な職人的な写実性と商業イラストの枠に収まりきらない芸術的な色彩感覚が混じりあって、「なるほど『富士山』だなぁ」と感じた次第です。氏の他の作品をこちらにまとめさせていただきました。
大橋氏は制服関係にも造詣が深く、
大阪万博のコンパニオンの制服についての
著書や昭和ウルトラシリーズの女性隊員
の研究本「ウルトラヒロインズ」(角川書店)
の編集を手がけており、こちらもなかなか
面白く、お薦めです。

今回のエントリーを書く過程で知り、参考にさせていただいたのが、「SF挿絵画家の時代」(大橋博之)という本。SFマガジンで連載されているSF小説の挿絵を手がけた画家を紹介した記事をまとめたもので、総勢71名のプロフィールが掲載されています。

個人的にSF小説は少年ドラマシリーズがらみのジュブナイルか、高校生の頃に読んだ筒井康隆の文庫本や映画の原作くらいしか縁がなく、小松崎茂や石原豪人といった有名どころはともかく、毛利氏はじめ大半は名前すら存じ上げていない方ばかりだったのですが、SF小説の仕事を基軸としているものの、児童文学や金田一シリーズといった推理小説、果てはプラモデルやおもちゃのボックスアートまで、と幅広い仕事が紹介されており、その仕事に就いた過程や職業観を含め、非常に面白く読むことが出来ました。商業出版の制約上、図版が少ない、小さいのは残念(ジュブナイルの図版は近々まとめた本が出るようですが)ですが、この種の本は少なく、大変な労作だと思いますので、興味のある方はぜひ一度手にとってみることをお勧めします。

映画の広告図案についても、こういった本が出てくると嬉しいのですが。

2013年1月24日木曜日

人生の特等席/007スカイフォール

12月に観たのは2本だけ。

人生の特等席」。一昨日早めに帰宅したら、たまたまBSで「目撃」をやっていて、ついつい観てしまったのですが、こっちも妻と死別して、弁護士になった娘と仲違い…と、好きなんですかね、この設定。

ハートブレイク・リッジ」で「トップ・ガン」のトムクルーズの真似した若造のサングラスを踏み潰すシーンを思い出す、「マネーボール」にケンカを売るようなストーリー。キーとなる大物ルーキー候補の弱点は原題でネタバレ、隠れた才能君の速球を女・子どもがキャッチできるのも無理筋。A・アダムスと、J・ティンバーレイクが田舎町で出会う若者のダンスも今時これはないだろうという古臭さ(「掠奪された7人の花嫁」が始まるのかと思ったぞ)…とリアリティなど考えたら頭が痛くなる展開なのに、ニコニコと観通せてしまうのは、「目撃」がホワイトハウスへの反撃をぬけぬけと達成してしまうのと同じで、「映画の文法=魔法」のかけ方が巧いとしかいいようがないです。「これでいいのか?」と問われれば、「これでいいのだ」と答えたくなっちゃうのは、イーストウッドびいきが過ぎるのかなぁ。

残念なのはパンフレットで、相変わらずの全作レビュー。こんなの喜んでいるのは書き手だけだと思うんだけど。劇中のスカウト仲間や弁護士事務所のパートナー連中あたりのクセ者たちを解説して欲しかったです。

一方、その「リアリティ」がどうにもしっくりこないのが、ダニエル・ボンド。「カジノロワイヤル」のエンディングには「新生ボンド誕生!」と、正直グッと来たのだけれど、次の「慰めの報酬」でガッカリ。やっぱ続編にしちゃダメだよな。ボンドガールや悪の組織はぬけぬけとリセットして、それまで何もなかったかのごとく始めなくちゃ。それに「リアルなジェームズ・ボンド」みたいな言われ方がされるけれど、そんなの”正義の味方の悪漢が、黒い白馬にまたがって、前へ前へとバックする”ようなもので、ムリだと思うのは俺だけか。

初っ端のアクションは良く出来ていたし、Qの若返りもグッド・アイデアなんですが。ダニエル・クレイグがどんどん暗くなっていく感じで、今回「実は復帰テストは不合格」というエピソードがあったけれど、地下鉄に飛びついて乗務員に軽口をたたくシーンのあまりの「寒さ」に思わず「お前はジェームズ・ボンド不合格!」と心の中で叫んでしまいました。

サム・メンデスの起用で主人公の内面性の描写とかは深まったのでしょうが、それが「007映画」に必要なのかと。下手に作家主義になって、毎回「僕のジェームズ・ボンド論」を見せられたらたまらんのですが。世界的にヒットしているだけに凄く不安です。観終わった後にネットで見つけた渡辺淳一の「人間はもっと軽薄にならなきゃ、高尚なら誰でもなれる。」という言葉を(渡辺氏の発言の趣旨とは違うかもしれませんが)製作陣に贈りたいです。

2013年1月18日金曜日

パーフェクト

小ネタをもう少し。

「映画チラシと共に」で話題になった「パーフェクト」の稀少柄について。
チョコさんが書かれていた「一部の地域に集中して出回った為に希少」という説は、自分も「お宝ブーム」期のムックで読んだ記憶があって、今回チラシとともに探してみたのですが、見つかりませんでした。とりあえずチラシそのものはサルベージしましたので、アップします。

このチラシ、年末に2件ほどヤフオクに出ていて、出品者の口上では試写会で配布されたようなことが書かれていましたが、どうなんでしょう。確かに通常版の2種類にある本国ポスターと同じコピー「ロサンゼルス。ヘルスクラブでは汗よりSEXを求めて―?」はなく、おとなしい雰囲気で、先行版ぽいつくりです。
 自分が持っているチラシには館名が入っています。裏面のデザインはすべて同じですが、通常版は薄い青色で、これだけ黒色です。

館名はいわゆる「全館」というヤツで、特定の館というものではありません。通常版と色は同じ(赤)ですが、少し小さめの表記になっています。大・高・中の料金欄が塗りつぶされていますが、通常版と金額は同じなので、なぜ黒塗りなのかはちょっと謎です。

この裏面を見る限りでは「一部の地域」というのがどこなのか(地方単位なのか、映画館単位なのかを含めて)分りません。この辺について何かご存知の方がいらっしゃっいましたら、教えていただけると非常に嬉しいです。

2013年1月15日火曜日

新・どぶ川学級

帰省土産をもうひとつ。裏焼きネタつながりということで。

70年代半ばの邦画のファイルを発見したので眺めていたら、「新・どぶ川学級」がタイトルの色違いだけではなく、キャストの写真が全員裏焼きになっていました。

あまりこの手の間違いに気づくことは無いのですが、並べてみるとさすがに分りますね。ここまで違うとかえって爽快です。

右側のチラシには音楽担当のクレジットが追記されていますので、こちらが後から出た「修正版」ということでしょうか。
これはチラシの話ではないのですが、裏焼きがらみでどうにも違和感がぬぐえないのが、現在発売されている「マイ・フェア・レディ」のブルーレイやDVDのジャケット。左のチラシの写真が正当ですが、なぜか裏焼きになっています。多分R・ハリソンも逆じゃないかな。

撮影を担当したのは英国王室とも縁が深い「サー」の称号もついたセシル・ビートンで、オードリーもカメラの向きを指定する人だったように記憶しているのですが、どうしてこんなのが認められているのか不思議です。個人的にはオープニングの花に止まった蝿を消すより、こっちを直せよと思います。

しかし「マイ・フェア・レディ」も権利が転々として、現在はパラマウントですか。製作したワーナーの90周年記念サイトにジャック・L・ワーナーが直々製作を担当したこの作品が出てこないのも何だかなぁ、と思います。まぁ「タワーリング・インフェルノ」や「マッドマックス」を出さず、「風と共に去りぬ」や「雨に唄えば」、「2001年」「カッコーの巣の上で」「ショーシャンクの空に」等々を堂々とヒストリーに載せているサイトなんで、ツッコミはじめたらキリがないのですが。

2013年1月13日日曜日

ザ・ドロッパーズ

松の内もとうに過ぎてしまいましたが、本年もよろしくお願いします。

年末は実家で寝正月でしたが、1日だけ遠出して九州国立博物館と太宰府天満宮へ。国立つながりなのか、フィルムセンターでこの8日から実施されているポスター展「西部劇の世界」のチラシがありましたので、ご紹介。3月末までの開催だそうですが、連動企画で映画も上映してくれませんかね。

少し時間があったので、屋根裏部屋に押し込んだ段ボール箱から何かネタはないかと暗闇の中、捜索してみたのですが、狙っていた昔のチラシ本(講談社のチラシ全集やお宝ムック類)は見つからず。寒いわ暗いわ埃は舞うわで早々に撤収。

それでも80年代、90年代のファイルは発見したので、帰省土産がてらに小ネタをひとつ…


前回のエントリーで「ザ・ドロッパーズ」に触れた時に思い出したのが、この作品のチラシの写真流用疑惑。タイトルの左上にある2台の車、見覚えがないでしょうか?

そう、これは同じ東宝東和で配給された「キャノンボール」のもの。こちらのとおりタテ型のチラシの裏面に掲載されているものと同じです。どちらかが裏焼きなのですが、流用されたことは間違いないですね。
まぁ、若者向けの映画の宣伝に美女と車は不可欠、ということで無理やりくっつけたのでしょうが、リアルタイムでこれを発見した時はイラストのチープさとあいまって、ちょっとガッカリしたものです。気づいた人も多かったのではと思いますが。

ということで、今年もネタが続く限り「チラシの裏」なたわ言を書き連ねてまいりますので、お付き合いいただければ幸いです。