おことわり

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2012年2月27日月曜日

ジュリアス・シーザー/殺しのカルテ/ブロンド美女連続殺人

「いちご白書」のエントリーでMGM日本支社の閉鎖について触れましたが、残念ながらこちらの調査不足で、いつごろ閉鎖したのかの特定まではできていません。ただ、70年代のMGM配給作品をリストアップしてみると、1974年初頭の4作、「大乱戦」「組織」「キャット・ダンシング」「ターザンの猛襲」(4月5日終了)で途切れますので、この年の前半には閉鎖されているのではないかと考えられます。ちなみに「いちご白書」の興行(ニュー東宝)も2週間で終了していますので、公開当初はさほど注目されていなかったのかもしれません。

で、この時代のMGMの不振を物語るかのようにいくつかのお蔵入り作品のチラシが存在します。いったいどこからどうして流出してきたのかは分かりませんが、結構な数が出回っており、この年代のコレクターにはポピュラーですので、ちょっと調べてみました。

 まずは「ジュリアス・シーザー」のリバイバル。初公開は1953年ですが、なぜこの時期にリバイバルされたかと考えますと、同じタイトルでチャールトン・ヘストン主演の新作が1970年2月に封切られているので、これに便乗したのではないでしょうか(あくまで推測ですが)。
画像のチラシには館名がありませんが、ケイブンシャの「秘蔵!洋画チラシ全集」(リンク先のアマゾンの画像は間違いなので注意)のP19にはニュー東宝の館名入りが掲載されています。ニュー東宝がシネマ1に改称されたのは72年5月なので、それ以前の予定ということになります。この時期のニュー東宝は71年の夏休み作品「小さな恋のメロディ」の20週ロングランに始まり、続く「卒業」のリバイバルも6週、正月作品の「初恋」が9週、「ロミオとジュリエット」のリバイバルが約10週で劇場名変更、という青春映画で大繁盛の状況。これらの作品より前に予定していたかもしれませんが、はじき飛ばされちゃったかな、という印象を持ってしまいます。

続いての「殺しのカルテ」はマイケル・クライトン別名義で書いた小説の映画化で、1972年の製作。前年に彼の原作映画化でヒットした「アンドロメダ…」には触れられているものの、1973年に彼自身が監督してヒットした同じMGMの「ウエストワールド」に関する記述が無いところを見ると、それより前に作られたチラシということしか判明せず。サントラ盤(ビートルズで有名なオデオンレコード)が出ているので、その時期が分かれば…と思ったのですが、これも品番(Toshiba/Odeon EOR10223)以外の情報は見つかりませんでした。ちょっと残念。


さらに「ブロンド美女連続殺人」(1973)となると、ネット上はほとんど情報なし。本家のIMDbを見ても、この映画で宣伝されてる「DUO-VISION」(スクリーンを2分割して上映を進めていく手法)と「悪魔のシスター」(アメリカでは1973年5月公開)のスプリットスクリーンの手法との類似性が指摘されてる程度の情報しかつかめませんでした。監督の方もテレビ畑の人のようです。

とりあえずこの程度のことしか分かりませんでしたが、少しはお役に立ちましたでしょうか。もう少し知ってるぞ、という方はぜひご一報を(こればかりですが悪しからず)。

※H24.12.12追記 その後の調べでMGM日本支社の閉鎖時期は1974年2月と判明しました。関連エントリーはこちらで。

2012年2月26日日曜日

ラインナップ(松竹1998/ブエナビスタ1999-2000)

以前アップしたコロムビア映画のラインナップチラシのエントリーに関連しまして、チョコさんより松竹とブエナビスタのひと昔前のラインナップチラシの画像を提供いただきました。A4片面とのことです。少し量がありますので、松竹はこちら、ブエナビスタはこちらにまとめています。各タイトルの下は公開年月日です。

この種の宣材をはじめて見かけたのは、かつて東京にあった輸入ポスターを主に扱っていた赤坂シネマテイクさんで「アドバンスちらし」なる名前のファイルを手にした時。A4の厚紙でいかにも関係者配布用といった仕様で、興味深くはあったものの、「いかんいかん。ここまで手を伸ばしてたら、いくらお金があってもかなわん。やっぱチラシは劇場で配られたもの程度にとどめておかないと。」と自分を説得したのを覚えています。

個人的はこの手のラインナップは胸がときめくものがありまして、キネ旬のベストテン特集号で各社の公開予定作品の広告を眺めるのが大好きでした。おそらくチラシ集めがいつまでたってもやめられないのは、これらに潜む「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」感とでもいうべき高揚感がたまらないからなのだと思います。

さて、いただいた画像の作品を調べてみますと、ラインナップの中には製作が遅れたり、企画倒れになったり、さらに洋画の場合は配給元が変わったり、未公開に終わったりするケースが多々あって、非常に興味深かったです。

例えば、松竹の「楽しい楽しい大病院」は「バカヤロー!」シリーズや「夜逃屋本舗」を当てた光和インターナショナルが製作会社となっているのですが、実際の製作は随分と遅れ、2005年になって「いらっしゃいませ、患者さま。」というタイトルで公開されています。山田洋次がらみの企画も消えたものがいくつもあるようです。「蓮如」は以前から企画があったようですが、この年が蓮如上人の没後500年という節目だったようで、東映でアニメ「蓮如物語」が作られています。こういった企画の重複も消える原因となるのかな、と思います(真相は知りませんが)。

ちなみにボツ企画を調べているうちにこのサイトの「裏日本映画史」にめぐりあったのですが、いや~面白い。映画雑誌の製作ニュースが大好きな人は必見の労作であります。

ブエナビスタの方に転じると、コメディ作品のお蔵入りが目に付きます。「GO!GO!ガジェット」は続編が出きるくらいアメリカではヒットしたのですが、日本ではビデオスルー。エディ・マーフィーの「ホーリー・マン」もビデオのみ(試写会のチラシは出回っていますが)。

この「マイ・フェイバリット・マーシャン」も「ブラボー火星人2000」というタイトルでビデオスルーになったのですが、この作品の予告を見た記憶があります。レンタルビデオ内のCMだったのかもしれませんが、あまりレンタルビデオを見ない人間(主義とか言うのではなく、返すのが面倒という単なるものぐさ)なので、ひょっとすると映画館かもしれないような。
「映画館で観たぞ!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。

チョコさん、今回も貴重な情報ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。

皆さまも「こんなものがあるぞ!」というものがありましたら、ぜひ情報をお寄せくださいね。

2012年2月23日木曜日

フェア・ゲーム

週末、佐賀に行く機会があり、ついでという感じでシアター・シエマに行ってみた。
雑居ビルの看板は改装前の映画館の名前のまま。カフェを併設したり、一部の座席をソファーにしたりと、いろいろ工夫しているのですが、ちょっと予算が…という感じ。頑張って欲しいとは思うけれど、劇場内の壁が白いのは勘弁して欲しいなぁ。

観たのは「フェア・ゲーム」。「グリーン・ゾーン」と同様の「大量破壊兵器は無かった」系の社会派作品。ボーンシリーズの監督が似たような題材を取り上げているのが興味深い。

エンタテインメントを装った告発映画を目指したのかもしれないけれど、結果としては中途半端な感があった「グリーン・ゾーン」に比べると、こちらはプレイム事件というスキャンダルを題材にしているものの、事件の真相を追及するというよりは、渦中にあった夫婦間の葛藤に焦点を当てながら、主たる観客であるアメリカ国民に「民主主義国家に生きる一国民としての覚悟」を問うというアプローチであり、これは正解だったように思いました。何せ妻はCIA職員、夫は元外交官のビジネスマンという、思い切り国益を追求する立場だったので、ナイーブな体制批判にはなりようがないし。それにしても組織が「結論ありき」で上から物事を進めていくのはやっぱりコワいですね。
事件に対するマスコミ(イラク戦争賛成派・反対派双方)の取り組み方やラストの大学だか市民講座だかでのショーン・ペンの熱弁に接すると、民主主義に対する態度の国民性の違い、成熟度の違いをあらためて考えさせられます。

余談ですが、サム・シェパード(ライトスタッフ)の存在感にはびっくり。出演していることすら知らなかったのですが、孫相手に(カウボーイの)輪投げに興ずる後姿がチラッと映っただけで「もしや」と思わせるのだから流石です。役柄もあったとはいえ「ブラック・スワン」でのバーバラ・ハーシーの変貌ぶりにショックを受けたので、この健在ぶりは嬉しかったです。


2012年2月19日日曜日

死刑台に接吻/軍曹

「新死亡遊戯 七人のカンフー」のエントリーでも触れたSTチェーンにしろ、東宝のTYチェーンにしろ、70年代のレアチラシといわれてる作品の大半はこの辺りの二番館でスプラッシュ上映されたものが多いです。

我ながら無謀だなぁ、と思うのですが、以前1970年代の東京のロードショー状況を新聞の縮刷版で調べようとしたことがあり(さすがに面倒で、わずか7月までで挫折)、ワーナーのレアチラシの2作がSTチェーンで上映されていたことが分かったので、当時のSTの上映状況とあわせ、ご紹介します。

主な映画館 浅草ロキシー、上野東急、池袋東急、新宿東映パラス、目黒スカラ、吉祥寺ムサシノ、川崎名画座、横浜ロキシー


1/13~23 マルキ・ド・サドのジュスティーヌ/インドの性典 カーマ・スートラ
1/24~30 炎/◎狂った蜜蜂(松竹映配)
1/31~2/6 勇気ある追跡/大反撃
2/7~13 17才/経験
2/14~20 ◎サファリ大追跡(COL)/◎ダイヤモンド強奪作戦(UNI)
2/21~3/13 ザ・SEX/人類の恥部を剥ぐ
3/14~20 ◎悪党谷の二人(WB)/◎空かける強盗団(WB)
3/21~27 性に群がるハイエナ/◎襲われた女たち(ABC)
3/28~4/10 世界秘教地帯を裂く 続・快楽と神秘/悪徳の快楽
4/11~24 白銀のレーサー/ミニミニ大作戦
4/25~5/1 ネレトバの戦い/◎太陽の暗殺者(ヘラルド)
5/2~8 ジェフ/マイ・フェア・レディ
5/9~29 性の歴史/夢魔のもだえ
5/30~6/5 ジュリアス・シーザー/激戦地
6/6~12 ハレンチ地帯をあばく/その瞬間 
6/13~19 地獄の艦隊/夕陽に立つ保安官
6/20~26 ◎死刑台に接吻(WB)/◎地獄の一匹狼(松竹映配)

6/27~7/14 痴情の沼/続・女体の神秘
7/15~21 ◎軍曹(WB)/勝利と敗北
7/22~(不明) 新・アニマル/裸の奇族

◎をつけた作品はキネ旬のDB等の公開日と一致しているものですので、このチェーンでの上映が初封切だったと考えられます。

「死刑台~」と「軍曹」は裏面に「プロフェショナル」という”新番組”の広告(下図参照)が載っているのですが、今回調べてみたところ、放映時期が1969年10月5日 - 1970年2月1日となっていました。と、いうことはおそらくこれらのチラシは試写会で使われたものと推測されます。

チラシの下部に館名を刷り込むスペースがありますが、使われたものが出てくる可能性は残念ながらかなり低いのではないでしょうか。

2012年2月18日土曜日

いちご白書/幕末太陽傳

「J・エドガー」の翌日、地元のミニシアターにてリバイバルを2本はしご。「いちご白書」「幕末太陽傳」です。

いきなり余談ですが、「『いちご白書』をもう一度」のリリースは1975年8月。「いちご白書」(1970年9月公開)を配給したMGM日本支社はすでに閉鎖されていたので、もう一度観たくても映画館では観られなかったはず(ちなみにこの年の3月に公開されたMGMミュージカルのアンソロジー「ザッツ・エンタテインメント」は松竹=富士が配給)。

現在の眼から見ると、学園紛争の意味がどうのと言うより、その当時の風俗を楽しむ映画になっちゃってます。運動に参加する若者たちのノリは他愛無く、お気楽とすら言えそう。それこそ昨今ネットをにぎわせたアンチ韓流デモと五十歩百歩。マスコミと大企業の癒着を非難するのもいっしょ、女の子目当てに参加するのもいっしょ。メジャー系の映画なので、政治的なメッセージはぼかしたのかもしれませんが(製作が「ロッキー」のチャートフ&ウィンクラーだったのでびっくり)。

とはいえ、警官隊突入あたりからラストにいたる展開は手持ちカメラや台詞を排した演出が効果を上げていて、この辺はニューシネマの片鱗がありました。
こちらは初公開時のチラシ。
渋谷宝塚なので、拡大公開時かも。

劇中、学生たちが盛んに警官たちをPIG(ブタ)と呼んでいるのを観て、そういえばマックィーンが「ブリット」のオファーが来た当初、「この俺にPIGを演れというのか」と拒絶したというエピソードを思い出しました。ロケ地がサンフランシスコだったので、ブリットさんやハリー・キャラハンさんも捕まえた学生さんの取調べを手伝ってたのかなぁ、ご苦労なこってした、と妙な感慨にとらわれた次第。

でも、後で調べたら、コロンビア大学って実際はニューヨークにあったのね。知りませんでした。


幕末太陽傳」は、小林信彦あたりから仕入れた知識でその存在は随分昔から意識していたのだけれど、今まで観る機会が無かったので、そういう意味では今回の再映は嬉しかったです。

もちろん、普通に観ているだけでも充分面白い作品なのですが、これ一本だけ観て日本映画の黄金期を語れるはずもなく、この映画の”肝”であろう落語や江戸言葉の知識の無さなど、己の無教養さをひたすら恥じ入る110分でもありました。

客に対して結婚の空手形を出しまくる女郎たちの姿は来店お願いメールを打ちまくる当節のキャバ嬢となんら違いは無いなぁ、というベタな感想もあるものの、やっぱり「お茶をひく」ってこういうときに使うんだな、みたいなところがあちこち出てくる訳でして。

勉強する、というものではないにしろ、もう少しいろいろ知識を身につけて、また観てみたい作品でした。


2012年2月16日木曜日

シネマ・ファースト友の会

もう少し続けます。
 「チラシつきセット」のエントリーで、これまたkussyさんのところでお世話になっておりますチョコさんより、似たような通販で「シネマ・ファースト社」というのがあったとのコメントと当時の案内文書の画像を提供いただきました(残りの画像はこちら)。1977年頃のようです。

詳細は明かせませんが、以前紹介したショップの系列会社と一致する個別情報がありました。分けて商売をやっていたのか、別々の会社がその後一緒になったのか、その辺は分かりませんが、提供されているチラシに共通点が多いのはむべなるかな。

というか、ここで紹介されている「チラシアルバム」、記憶にあるぞ!当時はもっぱらFOXスクリーンフレンドの「高級ビニール使用」アルバムを使っていましたが、チラシがたくさん載った表紙にちょっと惹かれた覚えがあります。店頭で見て作りがイマイチだったので、買わなかった気が(ごめんなさい)。
にわかに再会したくなっちゃったのですが、どなたか「持ってるぜ」という方いらっしゃいませんか?
画像情報お待ちしております。

それにしても重複・誇張もあるでしょうが、登録会員5,000人というのがすごいです。ヤフオクのチラシカテゴリーで、評価1,000を超えている出品者はあまりいないことを考えると、当時のブームが偲ばれます。

また、「チラシのみの販売は各映画会社から固く禁じられております」という表現があるのも興味深いです。チラシは無償配布が前提の宣伝材料なので、それに金銭的価値を与えるのは映画会社の立場としてはできないのでしょうね。

それにしてもチョコさん、貴重な情報ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします!
これをご覧の皆さまも「こんなん持ってるんですけど…」みたいなものがありましたら、ぜひ情報をお寄せください。


2012年2月13日月曜日

エーゲ海の旅情(40カラット)

「チラシつき」セットの件で、続きをもう1本書かせていただきます。

ワーナーやMGM以外にも、コロムビア映画の作品もいろいろありました。プロフェッショナル(リバイバル)、弾丸を噛め、ゴッドスペル、ロックンロールエクスプロージョン、またまたおかしな大追跡、ファニーレディ、狼よさらば…

そんな中で異彩を放っていたチラシがありました。恋愛映画のセットにつけられていた「40カラット」という少し厚紙のチラシです。デザインも通常のチラシとは異なる雰囲気。

店側がどういう説明をしていたのかは覚えていませんが、自分としては当初、お蔵入り作品と考えていたように思います。

少し経ってからこれが「エーゲ海の旅情」というタイトルで公開されていたことを知りました。

で、これがいわゆるコロムビアのラインナップチラシとしていくつか作られたものの一つだと知ったのはさらに後のこと。あるショップの委託ファイルで「ブレイクアウト」を見てからだったかな。

さらに年月がたって、やはりそのショップでまとめて入荷されたのを機に一気に手に入れ、その時初めて全貌を知った次第です。

チラシは全部で9種類。その全貌は、やはりkussyさんの掲示板でお世話になっていますキャグニーさんのチラシサイト「映画の時間ですよっ!! Part2」で見ることができますので、ぜひご覧ください。

このチラシ群、おそらく映画会社が業界関係者向けに配った、今はなき赤坂シネマテイクさんがいうところの「アドバンスチラシ」というものだと思うのですが、なぜ1975年だけこんなものが作られた or 一般に流出したのかはわかりません。これ以外の年度に似たようなものがあるかもわかりません(多分ないと思うけれど)。

訪問者数はまだまだ少ない拙ブログですが、ご事情をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひともご教示願います。


2012年2月12日日曜日

J・エドガー

「J・エドガー」の公開規模が悲しいことになっていて、HPを見ると東北、北陸、中四国は完全にオミット、九州も福岡・沖縄だけという状況。賞レースから脱落すると、ディカプリオ主演でもこうなるのね。

というわけで、車を走らせTOHOシネマズ久山へ。昔、まだ地方ではショッピングモールが珍しかった頃行ったことがありましたが、その時はヴァージンシネマズでした。入ってみるとトイレの場所とかわかりにくく、デザイン優先で機能性悪し。調べてみると1号店だったので、気負っていたのかな。ロケーションと重ねあわせると、大阪南港の公共事業の無駄使い群を思い出してしまいました。

イーストウッドは人間の孤独や悲劇、国家権力から抗えない運命みたいな話を描かせると、ちょっと物事を突き放して捉える感覚が冴えて、淡淡としたタッチが抜群の効果を上げるのですが、「インビクタス」のような友情・努力・勝利、といった少年ジャンプ的な展開を(観客も脚本家も)期待するお話ではそのタッチが完全に裏目に出て、長距離ランナーに三段跳びをやらせたような違和感が残ってしまうように思います。

その点、今回の題材は適材適所で、一時代を画したパワーエリートの功罪、光と影をことさら露悪的に描くのではなく、信条や能力が時代とそぐわなくなっていくことの厳しさ、名声と孤独の中で、決して公にできない性癖を抱えながら自己を保つことの困難さを絡めながら、ひとりの人間ドラマとして描いていて、見応えありました。キャグニーの使い方もうまい。

ただ、巷間指摘されていることでもありますが、ディカプリオやナオミ・ワッツの老けメイクはちょっと無理がありますね。観ていて思ったのですが、眼を老けさせるのは難しいのかな、と。FBI長官だから年老いても眼光は鋭かったのでしょうが、年寄りの鋭さとはちょっと違うんですよね。若い人間の眼なんだよなぁ。

それにしても、何故母親役がイギリスを体現するようなジュディ・デンチだったんだろう。親子の関係と英米の関係を暗喩している部分があるのでしょうか。わかりません。ナオミ・ワッツはオーストラリア人なので、イーストウッドが適当こいただけかもしれんけど。
トンデモも多いけれど、時折鋭いことを書く副島隆彦あたりの見解が読みたいです。

2012年2月11日土曜日

新死亡遊戯 七人のカンフー

またまた!渡辺屋さんより前回のエントリーの”ちらし付き”写真セットの実物とその前に紹介した東宝特撮映画のポスター縮刷版セットの画像をいただきましたので、小生の責任でこちらにアップしておきます。いつもいつも本当にありがとうございます。

写真を見ていてブルース・リーのものは買わなかったことを思い出しました。「新死亡遊戯 七人のカンフー」がおまけにつくはずが、品切れだったかでつかなかったせいだったように記憶しています。他についていたのは「嵐を呼ぶドラゴン」(ワーナー)だったかな。さすがにこの辺の記憶はあやふやです。

この「新死亡遊戯」、当時から結構稀少品だったと思います。小生が所有しているのは館名のないものでしたが、東京ではSTチェーンという、すでに滅亡寸前の弱小興行チェーンで公開されていて、「浅草ロキシー」あたりの館名が刷られたものが出ているはずです。STチェーンって?と思われる方は78年公開の「スパイダーマン」と「溶解人間」の二本立チラシの館名をイメージしていただくと判りやすいかと。東京ではこの系列で「巨大蟻の帝国」と「怒りの群れ」の二本立を上映したはずですが、残念ながらチラシは出なかったようです。

配給は富士映画。この社名を聞くと、邦画では梶原一騎の三協映画とのコラボや白日夢や華魁といった武智鉄二作品を思い出してしまいます。山田洋次あたりの健全なイメージが強い松竹の裏稼業、暗黒面を引き受けていた感が。洋画は松竹富士の頃の印象が強いです。



2012年2月9日木曜日

ジェフ/荒鷲の要塞

























ショップがらみのネタでもう一本。
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30年以上も前に取り扱っていた商品についての話題ですので、この件について現在営業しているショップに問い合わせたりすることは決してなさらぬよう、お願いいたします。
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今は通販のみになっているようですが、テアトル新宿から靖国通りをはさんで反対側のビルの1階に”シネマブティック鷹”という小さなシネショップがありました。ポスター、キャビネ、プレス等、取扱商品も幅広く、この種の店としては女性客も少なくなかったように記憶しています。
高校時代、この店が販売していたのがB5サイズの映画の白黒写真(といっても厚紙に複写したもの)4種類に旧作のチラシをおまけにつけたセット商品でした。
写真はジェームズ・ディーンやマックィーン、小さな恋のメロディ等々、当時人気のスターや作品でしたが、チラシに狂っていた私にはそれらはどうでもよく、おまけのチラシ欲しさに小遣いが出るたび、バイト代が入るたび、せっせと買い込んだものでした。カード欲しさにライダースナックを買っていた子どもさながらに。

この「おまけ」が当時の自分には魅力的だったのですが、残念なことに大半のチラシが映画会社から直接流れて来たせいか、「館名なし」だったのです(特にワーナーとMGM)。

思いつくままに挙げますと、ワーナーはジェフ、ブリット(リバイバル版)、フリービーとビーン大乱戦、エデンの東(70年代初頭のリバイバルで横型二つ折りのもの)、ウッドストック(通常二つ折りのものが何故か半分だけの状態で)…

MGMは荒鷲の要塞、特攻大作戦(リバイバル版)、戦略大作戦、ウエストワールド、ソイレント・グリーン、愛のために死す、ハイジャック…
2001年宇宙の旅は「品切れ」になっていてガッカリした記憶があります。

結局これらの大半は後年、館名入りを買い直すことになるのですが、それでもその頃は「古いチラシが手に入る!」とわくわくしたものです。

今こうやって「ジェフ」を並べてみますと、やっぱり館名なしはちょっとつらいですね。一方「荒鷲の要塞」は未だにこっちしか持っていません。「荒鷲~」はチェーンマスターの丸の内東宝が70㎜上映館ではなかったので、70㎜マークが塗りつぶされているのが嫌(同じことは「プロフェッショナル」や「サンセバスチャンの攻防」にもいえるのですが)で、何となく避けているうちに今日に至ってしまいました。

このセットについても、現物の写真を持っている等、詳しい商品の情報・ご記憶をお持ちの方がいらっしゃいましたらご一報いただければ幸いです。

2012年2月8日水曜日

近代VTR社の映画チラシ写真入りカタログ


お陰さまで1ヶ月が経過いたしました。不慣れな運営でご迷惑もおかけしておりますが、引き続きよろしくお願いいたします。

コメント欄のシステム等で説明不足の点もございましたので、「このブログについて」というページを設けました。一読いただければ幸いです。

さて、FOXスクリーンフレンドのチラシカタログの画像を提供していただいた渡辺屋さんより追加で近代VTR社なるシネショップの通販カタログの画像情報をいただきました。

ここは覚えがないなぁ~。名前からすると映画雑誌「スクリーン」の発行元である近代映画社と関係ありそうな気がしますが、住所は全然違う(神田と中野)ので、単に便乗していただけなのかもしれません。
カタログの体裁も商品のラインナップもFOXスクリーンフレンドと似た雰囲気です。これはあくまでも推察ですが、映画業界(配給会社もしくは興行会社)の中に”商品”として一定量のチラシを確保できる共通の供給ルートのような存在があったのではないでしょうか。どちらかといえば個人からの持ち込みを基盤とする古書店や切手商が出自のショップとは別の印象を抱かせます。

その根拠(?)ともいえるのが、この手の店が多く扱っていた映画会社作成の「チラシセット」です。当時はこの手の物は「ニセモノ!」とバカにして、手を出さなかったのですが、今になると「ひとつくらいは(資料として)買っとけばよかったな~」と思ったりします。東映系で二本立てで上映されたジャッキー・チェン主演作を1枚ものにしたチラシ群は未だに持っていません。オークションで出品されても、何とかして安く入手したいとセコく考えてしまうので、いつまでたっても落札できません。
東宝特撮映画のポスターを縮刷した”チラシ”セットもときどきバラ売りでオークションで出ていますね。たまにチラシ扱いする出品者がいたりすると、知らない人も増えているんだなぁ…と思ってしまいます。こちらも結局未入手のままだわ。

と、思い出せないショップのカタログで、あれこれ書き連ねて参りましたが、ここをお読みの皆さまも「こんなの持ってるよ!」というものがありましたら、ぜひ小生まで情報をお寄せくださいませ。現存するショップの場合は、古いカタログであろうが平気で問合せをする人もいるらしく、お店への影響を考えて掲載できない場合もありますが、あまりこの種の資料はネットでも見かけないので、少しでも取り上げられればなぁと考えております。ご協力をお願いいたします。

渡辺屋さん、今回もありがとうございました!

2012年2月5日日曜日

ウィンターズ・ボーン/宇宙人ポール

午前十時の映画祭とフリーパスの活用に四苦八苦していたら、遅ればせながらこちらで公開されていた「ゴーストライター」を見逃してしまった。気がつけばキネ旬のベストワン。しまったなぁ。3月に県外で上映するので、久々に遠征してみるか。秘宝のベストワンの「ピラニア3D」も瞬殺で打ち切られたし、地方暮らしは油断大敵です。
その罪滅ぼし、ということでもないのですが、「ゴースト…」を上映していた県内唯一のミニシアターに久々に出陣。割引きかせて1,600円という料金にいつも二の足を踏んでいたのですが、今回行ってみて5本観て5,000円の回数券があることを知り、狂喜。これからはもうちょっと通わせていただきます。
で、「ウィンターズ・ボーン」と「宇宙人ポール」をはしごしてみたのですが…

「ウィンターズ・ボーン」はアメリカ中西部の貧困層の暗部を題材にしたドラマ。地方の集落がきれいごとですまないのは日本もアメリカも同じなのだろうけれど、ドラッグや銃がはびこっている分だけアメリカの方がきついよなぁ、とは思いました。
ただ、それ以上の何かをこの映画で得られたかというと、正直自分にはきつかったかな。ひどい格差社会であるアメリカの実態を訴えたいという作り手の良心は伝わってくるし、その重要性も頭では理解できるのだけれど、それ以上にはどうしてもならない。

正直なところ、帰宅後につけたテレビで途中から見たNHKドラマ「キルトの家」で語られた、東日本大震災や老いや死についての山田太一独特のモノローグの数々の方がずっと身につまされてしまう訳で。

マザー・テレサの「大切なことは、遠くにある人や、大きなことではなく、目の前にある人に対して、愛を持って接することです。」という言葉を思い出し、映画本編以外のところでいろいろ考えさせられてしまいました。

「宇宙人ポール」は、観ているあいだずっと、「町山智浩(字幕監修)が死ぬほど喜びそうな映画だな~」という気がしてなりませんでした。

だって、積極的に公開実現に関わった「ホット・ファズ」の二人がSFオタクを演じて、スピルバーグのオマージュ全開で、主人公の恋人は氏がアメリカ問題で積極的に紹介するキリスト教原理主義派で、しかも「キル・ビル」でダリル・ハンナが演じた殺し屋みたいなアイパッチしてるんだもん。観終わった後、本屋で秘宝のベストテンをチェックしたらやっぱり1位に入れていた。そりゃそうだわな。

ただ、自分としてはこの種の”オタクが報われる映画”は「もういいよ」あるいは「まだやるの」という感じ。「ギャラクシー・クエスト」から何年経ってるの?というのが正直なところです。
ロドリゲスの「マチェーテ」を観た時も感じたのだけれど、「俺も大概子どもだけれど、いい加減にしたら?」という感想は、やっぱりオタクの気が抜けない自分自身の近親憎悪なのかな。つい観に行っちゃうんだけれど。

FOXスクリーンフレンドの宣伝用チラシ・オールカタログ


 以前のいくつかのエントリーでFOXスクリーンフレンドのことを書きましたところ、KUSSYさんの掲示板でお世話になっているシネショップの渡辺屋さんより、コメントをいただき、あわせて当時のカタログの画像を頂戴しましたので、渡辺屋さんの許可を得て、アップしてみました(画像は5枚あり、残りの3枚はこちらに)。
商品のラインナップから見て、1986年頃のもののようです。

懐かしいなぁ。当時は関東に住んでいましたので、通販は使っていませんでしたが、この時期には月イチくらいの割合でこの店に行っていました。だいたい有楽町・日比谷の映画館からスタート、銀座文化(現在のシネスイッチ銀座)経由で「なかよし」か「末廣」でラーメンを食べた後、晴海通りをひたすら歩いて東劇に寄り(松竹セントラルはチラシをくれなかった)、こちらの店が終点、というのが定番のチラシ巡礼コースでした。

店舗内の写真が載っていますが、店内に張ってあるチラシの番号をカタログと同じような体裁の注文表に記入、精算する形だったと記憶しています。受付側の右奥の隅あたりに古い品が積んであったかな。で、客から見て受付の左手あたりに店内販売限定で最新作のチラシがケースに入っていました。「ブラインド・デート」のピンク版とかここにあったものを入手した気がするんだけれど、記憶違いかも。

カタログに「チラシもの知り帖」というコラムがあり、画像だと字が小さいので、書き写してみます。

★映画チラシのできるまで★
アメリカ映画の場合ですが、最初にオリジナル・ポスター(英語版)がアメリカより空輸されてきます。
それをもとに日本版ポスター・チラシを映画会社の宣伝部、ときには劇場支配人などが日本語名を決めたり宣伝文などディスカッションして、カラフルでビューティフルなものを作り上げます。
チラシには1枚1枚個性があり、好きな映画やスターを選んで集める楽しみがあります。チラシの裏面には映画の解説や製作スタッフ、キャストなどがのせてあります。劇場やテレビ放送などで見た映画のチラシは思い出として記録にもなります。チラシは数に限りがあるので、大切に保存しましょう。

特価販売の注釈に「ほとんど当時発行のチラシですが一部リバイバル・再版もあります」とあるのがこの店らしく、ある意味(コレクターにとっても)泣き所ですね。

ともあれ、渡辺屋さん、貴重な情報提供ありがとうございました。

2012年2月4日土曜日

幻の湖

「新・猿の惑星」の拡大公開日が9月11日だったので、う~む…と唸っていたら、寝床の横に積んであったチラシの山の上にあった「幻の湖」のチラシも9月11日公開となっていてちょいとびっくり。

でも、何にびっくりしたかといって、前任地の職場で、向かい側の席に座っていた女性の先輩と珍しく映画の話をした時、その方が「昔、すごく変な映画を見たことがある。ソープ嬢が犬と走ってて、なぜか戦国時代になって…」と言い出して、「幻の湖」の話をし始めた時ほどびっくりしたことはないです。
観ている人っているんですねぇ。でもまさかこんな身近にいたとは。
大阪の時の話ですので、ひょっとするとこのチラシの配布先である梅田劇場で観たのかも。
この時代、いくつか作られた二色刷りの大阪版の東宝系チラシですが、このデザインが一番好きですね。鬼気迫る感じがいいです。
それにしても何でこのパターンのチラシは裏に「日刊アルバイトニュース」の広告が入っていたのでしょうか。学生援護会は東京の会社なのに。どうせ大阪ならいしいひさいちの「バイトくん」を連載していた「日刊アルバイト情報」だったらとも思うのですが。


2012年2月2日木曜日

新・猿の惑星

前回のエントリーで「猿の惑星」に触れたので、第3作の「新・猿の惑星」について少々。
「猿の惑星」第1作のチラシの人気の高さは今さら言うまでもないけれど、その次に人気が高いのがこの作品。
で、これが稀少度が高い原因なんだと思うのですが、このチラシの東京版って拡大公開時のものしかないですよね?
猿の惑星といえばここ!、という素晴しいサイトでも確認できますとおり、「新・猿の惑星」は1971年7月31日に日比谷映画と新宿プラザでロードショー公開され、その後、9月11日に渋谷宝塚、池袋劇場、江東リッツの3館で公開されています。
ヤフオクでこの作品が出品される度にチェックしているのだけれど、9月公開時の3館以外は見たことないです。
ということは、日比谷の先行公開時にはあのタブロイド新聞形式の「夕刊サル」(所有していません。)しかなかったということなのでしょうか。当時の東宝のラインナップを見渡しても、「栄光のル・マン」と並んでこの作品が夏休み作品の目玉だったと思えるので、なおのことチラシの遅れ(?)が不可解です。事情をご存知の方、いらっしゃいませんか。

ちなみにこの「うちわ」は関西で公開された時の宣材。
きちんとスキャンできなくてごめんなさい。
ちなみに裏面は民音の歌謡ショーの宣伝になっています。

余談ですが、このエントリーがらみで元ネタの「夕刊フジ」のWikipediaを見たら、創刊号(1969年2月25日)の1面の見出しが
「慎太郎新党躍り出る」だったとか。
徳川埋蔵金状態とでもいうべきなのか、マスコミは何年同じネタで食ってるんでしょうかね。